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葬儀の香典マナーとは? 相場や注意点、書き方・渡し方・袱紗の使い方
/(株)くらしの友 儀典本部
2004年くらしの友入社、厚⽣労働省認定の技能審査制度「葬祭ディレクター」1級取得。
故人様とご遺族に寄り添い、大規模な社葬から家族葬まで、これまで1,000件以上の葬儀に携わる。
「葬儀にいくらくらいの香典を持っていけばいいか分からない」「宗教によって香典袋の書き方が変わると言われているけれど、宗教が分からないときはどうすればいいの?」「香典のマナーや基礎知識について知っておきたい」
このように思う人も多いのではないでしょうか。
ここではそんな人の疑問を解消するべく、
・香典の金額の相場
・香典の渡し方のマナー
・香典と宗教
・香典の「困った!」を解決する方法
について解説していきます。
※本来「香典」という言い方は仏教用語です。そのため、キリスト教や神道では使いません。しかし広く利用されている言葉ではあるので、本稿では、特に分ける必要がある部分以外では「不祝儀=香典」としてお話していきます。
この記事で分かること
- 香典袋の表書きの書き方とポイント
- 香典の包み方・お札の入れ方
- 香典の渡し方とタイミング
目次
1 香典金額の相場と注意点
まずは、「香典金額の相場と注意点」について解説していきます。
1-1 香典金額の相場と注意点
香典の相場は、「香典を出す側の年齢」と、「香典を出す側と故人との関係性」によって変わってきます。
基本的に香典の額は、香典を出す人の年齢が高いほど大きくなり、香典を出す人と故人との関係性が深ければ深いほど大きくなります。
表にまとめたので参考にしてください。
100,000円
100,000円
100,000円
50,000円
50,000円
50,000円
30,000円
30,000円
30,000円
20,0000円
30,000円
30,000円
友人やその家族 5,000 円~10,000 円
隣近所の方 3,000 円~5,000 円
※2009年 くらしの友「香典に関する調査」の最多回答金額ならびに平均金額を目安の参考にしています。
※「自分の親が亡くなり、自分が喪主であり施主である」という場合は、当然香典は包む必要はありません。
※上記は一例です。例えば、親族間で「この関係性の人ならば〇円」などのように決まっている場合はそれに従います。
※食事の有無によって包む金額が変わる地方もあります
1-2 香典で避けた方が良い金額
香典は、「キリの良い金額(5,000円や10,000円など)」で出すのが基本です。また、4や9などの数字は避けます。日本においては「4」は「シ=死」「9」は「ク=苦」を連想させる、忌み数字(縁起が悪い数字)だとされているためです。
1人で香典を包む場合はこのような数字になる可能性は低いと思われます。注意したいのが、例えば9人が1人1,000円ずつを出し合って「○○一同」として香典を包む場合などです。このような時は、9,000円を包むのではなく、1,000円をプラスして10,000円にして出した方がよいでしょう。
2 香典の表書きの書き方と、渡し方のマナー
香典の金額の他にも、「香典の表書き」や「香典の渡し方」なども迷うところが多いものです。
ここでは香典の表書きや渡し方に関するマナーについて解説します。
2-1 香典袋の表書きの書き方とポイント
香典は、水引で区切られた上部分に表書き(「御霊前」など。表書きの表記については後述)をします。
そして水引で区切られた下部分に、香典を出す人の名前を記します。なお名前は、フルネームで記すのが原則です。なぜなら同じ苗字の人が同じ葬儀に参列する可能性もあるからです。
夫婦で葬儀に参列する場合は、夫の名前だけを記す方法を取るのが一般的です。ただし、妻の親族の葬儀や夫婦ともに親交がある人の葬儀、国際結婚であったりする場合は、連名で記して出すことが多いといえます。また、「亡くなった人が妻としか関わりがなかった人(例:妻の友人など)」の場合は、妻の名前だけで構いません。
連名で書く場合は、立場が上の人の名前を中央に書き、向かって左側にほかの人の名前を記すようにします。ただ人数があまりにも多すぎる場合は1人の名前だけを書き、ほかの人の名前は別紙に書いて香典袋に入れるようにするとよいでしょう。
「部内で集めたお金を、1つの香典袋に入れて出す」という場合は、「〇〇一同」とします。
2-2 香典の包み方・お札の入れ方
香典袋に中袋が付いている場合は、中袋にお札を入れて出します。
なお、中袋がない場合は、香典袋にそのままお札を包んでもマナー違反にはなりません。
中袋には、金額と名前、住所を記します。特に、「家族葬なので受付が設けられていない」という場合は、この3点を書いておくと、受け取ったご家族の手間を減らせます。芳名帳がない場合、「だれがいくら香典を寄せてくれて、その人の名前と住所はどうであったか」がわからなくなってしまい、香典返しのときに苦慮するご家族も多いからです。
香典袋は、まず下部分を折って、その次に上部分を折ります。ちなみにこれは、慶事のときと逆です。慶事のときは「喜びがこぼれないように」という願いを込めて下部分を上にし、弔事の場合は「悲しみが流れますように」という願いを込めて、上部分を上にするとも言われています。
なお、「お札はどのようにして入れるか?」については、専門家の間でも見解が分かれます。ただ比較的多く取られている説は、「肖像画が書かれていない方の面を上にして、香典袋を包む」というものです。これは「悲しみで面をあげられない」という気持ちを表しているからだともいわれています。もっともこれは絶対的なものではありませんから、気にしすぎる必要はないでしょう。
ちなみに昔は、「香典には新札は使わない。葬儀が起きることを予想していたという意味になるから」といわれていました。
しかし現在は、「しわくちゃの古びたお札を入れるよりは、きれいなお札の方が良い」という考え方も出てきています。手元に新札しかなく心配な場合は、折り目をつけてから入れてもよいでしょう。
2-3 香典の渡し方とタイミング
香典を渡すタイミングは、「通夜や葬儀・告別式が始まる前」です。受付が用意されている場合は、そこで渡します。
家族葬などで受付が設けられていないという場合は、ご家族に直接お渡しすることになります。会場で会って挨拶をするときにお渡しするとよいでしょう。なお家族葬の場合は、ご家族が「香典辞退」の意向を示されていることもあります。この場合は、ご家族の意向に従いましょう。
香典袋は、むき出しのままでは持ち歩きません。必ず袱紗(ふくさ)に包んで持っていきます。葬儀に使う袱紗は紺色や藍色などの寒色系を選びます。赤やオレンジのような暖色系の袱紗は使わないようにしましょう。寒色系が弔事の色であり、暖色系は慶事の色であるとされているからです。紫色の袱紗は、慶弔どちらでも使えます。
なお「袱紗は、風呂敷タイプのものがもっとも正式である」とされていますが、現在はポケット式のものでもマナー違反ではないとされています。
渡し方についても見ていきましょう。
受付に足を運んだら、まずは芳名帳へ記帳をします。記帳後、受付で袱紗から香典袋を出して、相手から見て表書きが読みやすい状態に回転させます。そののち、袱紗の上もしくは香典を受け渡すためのお盆(受付に用意されています)に載せてお渡しします。
香典をお渡しする際には「この度はご愁傷様です」などのように簡単に挨拶の言葉を添えることもありますが、挨拶が長くなりすぎないように心がけましょう。
3 宗教による不祝儀の違い
ここからは、「宗教による不祝儀の違い」について細かく解説していきます。
なお、不祝儀を渡すときの「宗教・宗派」は、「亡くなった方(あるいは残されたご家族)」の信仰に添います。そのため、「不祝儀を渡す側である自分は仏教の浄土宗を信仰している。亡くなった方はキリスト教のプロテスタントを信仰しており、葬儀もプロテスタントの形式で行われる」という場合は、キリスト教のプロテスタントのかたちに従う不祝儀袋を用意します。
3-1 不祝儀袋の表書きの種類と宗教による違い
不祝儀袋の種類と書き方は、宗教によって異なります。
【仏教】
※「御霊前」だけを正とするのは、こと仏教について取り上げる本稿では、浄土真宗の件があるので誤りかと思います。より詳しい表記にあらためました
黒白あるいは双銀、もしくは双白の結び切りの水引がついた香典袋を使うのが原則です。ただし地方によっては、まれに黄白の水引を使うこともあります。仏教の場合は、ハスの花の印刷された香典袋を使うこともできます。
表書きは、「御佛前(浄土真宗の場合)」「御霊前(それ以外の宗派の場合)」「御香典」「御香料」とします。
【神道】
黒白あるいは双銀、もしくは双白の結び切りの水引がついた香典袋を使うのが原則です。しかしハスの花は仏教の花であるので、これの印刷された香典袋は使いません。同様に、ユリの花や十字架が印刷されたものも利用しません。
表書きは、「御神前」「御榊料」「御玉串料」とします。
【キリスト教】
キリスト教の葬儀の場合、不祝儀を入れる袋としては白無地の封筒を選ぶのが原則です。また、ユリの花や十字架が印刷されたものも使えます。
白無地の封筒を使わなければいけないという決まりはありませんので、もし白無地の封筒が手に入らない場合は、水引のついた不祝儀袋を使っても構いません。ただし、ハスの花が印刷されていないものを選びましょう。
表書きは、「御花料」であれば、カトリック・プロテスタントのどちらでも使えます。プロテスタントならば「忌慰料(きいりょう)」、カトリックであれば「御霊前」「御ミサ料」の表書きも使えます。
3-2 宗派が分からない時の表書き
「相手の宗教や宗派が分からない」という場合は、以下のやり方を選ぶとよいでしょう。
・黒白(または双銀か双白)の水引の、無地の不祝儀袋を選ぶ
・不祝儀袋の表書きは「御霊前」とする
黒白あるいは双銀、もしくは双白の水引はどの宗教・どの宗派でも使えます。
また、「御霊前」という表書きは、どの宗教・どの宗派でも使えます。厳密には仏教の浄土真宗及びキリスト教のプロテスタントではこれを使わないことになっていますが、一般弔問客が持っていく分には咎められることはありません。
4 【ケース別】こんなときどうする?香典の知識
最後に、香典に関するよくある質問について答えていきます。
4-1 仕事関係の方が亡くなり、会社の代表として伺う場合
会社代表として行く場合は、表書きは社名+部署名にするのが基本です。またこの場合は、名刺を渡すこともあります。このときの名刺の役割は、「ビジネス相手に自分を覚えてもらうため」ではなく、「香典を渡した人間の身分を証明するため」にあります。そのため、名刺の右上に「弔」という文字を記します。また記し忘れた場合は、左下の隅を折った状態で渡します。上司の代理として参列する場合は、上司の名刺を預かるとともに、「自分が代理で来たこと」を受付で伝える必要があります。
芳名帳への記載も忘れずに行います。代理として参列する場合は、芳名帳にも「代(あるいは『代理』)」の表記をします。
会社の代表として参列する場合は、自分の立ち居振る舞いが会社の印象をも左右するものになるという心構えを持っておく必要があります。
4-2 持参した金額が少なかったと、後から感じた場合
冠婚葬祭に参列する場合の祝儀・不祝儀の額は、「迷ったのならば、多めに」が基本です。これは、香典でも例外ではありません。少ない金額を包むよりは、「多くのお気遣いをいただいた」と思ってもらえるように多めの金額を包む方が無難です。
もし葬儀の会場へ向かう途中で、「ほかの人と話していて自分の金額が少ないと思い至った」という場合は、人目につかない場所で香典袋をほどいて、お金を足すとよいでしょう。
万が一、葬儀後に「持参した香典が少なかったのではないか」と感じた場合は、四十九日法要などで多めに出す方法もあります。ただし四十九日法要は、葬儀とは異なり、招かれた人しか参列できません。四十九日法要に参列できないようならば、お花やお線香などを渡して香典の不足を補ってもよいでしょう。
5 まとめ
相互扶助の精神から生まれた「香典」の文化は、令和の時代になっても消えることはありません。
香典は亡くなった方とそのご家族を労り、そのお心に寄り添うものです。そのため、何よりも重要なのは「弔おうとする気持ち」「労わろうとする気持ち」です。
また、「香典のルール」「香典のマナー」を知っておくと、その気持ちをより的確に示すことができるでしょう。