- 葬儀
家族葬での喪主の挨拶 通夜・葬儀・告別式
/(株)くらしの友 儀典本部
2004年くらしの友入社、厚⽣労働省認定の技能審査制度「葬祭ディレクター」1級取得。
故人様とご遺族に寄り添い、大規模な社葬から家族葬まで、これまで1,000件以上の葬儀に携わる。
通夜・葬儀の場で、喪主は「挨拶を行う場面」によく立たされることになります。しかし、親しい間柄の参列者のみの家族葬の場合でも、一般葬と同じように喪主としての挨拶が必要なのか、判断に迷うケースもあるのではないでしょうか。
ここでは「家族葬における喪主の挨拶」を取り上げて、
- ・家族葬でも挨拶をするべきなのか
- ・挨拶をするべきタイミングはいつ?
- ・挨拶のときの例文
- ・挨拶をするときに気を付けるべきこと
について解説していきます。
※なお下記では特筆すべき理由がない限り、すべて「仏教式で行う通夜・葬儀」を想定しています。
この記事で分かること
- 喪主の挨拶は基本的には弔問客に対するお礼などを述べるためにある
- 挨拶は「何を話すか」のメモを用意しておいた方が安心
- 挨拶では「どのタイミングで、何を言うか」、「使ってはいけない言葉はどんなものがあるのか」を事前に把握しておくとよい
目次
1 家族葬でも喪主は挨拶をした方がよい
挨拶は基本的には弔問客に対するお礼などを述べるためにあるものです。たとえば、通夜・葬儀に参列してくれたことのお礼を述べたり、今まで故人が受けてきた厚意に感謝するために行われたりします。
また同時に、通夜・葬儀での挨拶は「次の行動を促す・案内するための通知」という役目も持っています。たとえば、精進落としの席での献杯を促したり、すでに決まっている場合は火葬後に四十九日法要の日程を知らせたりするのもまた、喪主の挨拶の果たすべき役割だといえます。なかには、通夜振る舞いに関する簡単な誘導を行うケースも見られます。
一般葬では、この「通夜・葬儀での喪主の挨拶」がほぼ必ず進行のなかに組み込まれます。参列する人の数が少ない家族葬であっても、挨拶は、「お礼を伝える」「次の行動の案内を行う」という性質上、行った方がよいでしょう。
一方で「家族葬であり、かつ数人の家族だけしか参列しない」などという場合は、喪主の挨拶を省いても差支えのない場合もあります。
このあたりは明確な「正解」はないため、ご家族・ご親族と話し合って方向性を決めるとよいでしょう。
2 【例文】家族葬の喪主の挨拶のタイミング
ここまで「家族葬における通夜・葬儀の挨拶の考え方」について述べてきました。家族葬の挨拶であっても一般葬の挨拶であっても、その内容には大きな違いは見られません。参列する人の数が少なくなる傾向にある家族葬の方が、むしろ緊張しなくて済むと感じる人もいるでしょう。
ただ、実際に挨拶をするとなると「どのようなことを話せばよいか分からない……」と悩む人も多いかと思われます。そこでここからはそんな人のために、挨拶の意味や挨拶に組み込むべき要素、そして挨拶の実際の例文について紹介していきます。
2-1 通夜の後
通夜の後に、参列してくれたことへのお礼と、通夜振る舞いがある場合はその旨を告げます。
親しい間柄のみで執り行う家族葬であれば、以下の例文のようなかしこまった表現でなくても問題ありません。
【通夜の後の挨拶の例文】
「本日は亡き母〇〇の通夜式にご参列いただきましたこと、心からお礼申し上げます。故人もさぞ喜んでいることと思います。
この後、別室にてささやかな食事の席を設けております。お時間の許す方はぜひご参加いただきますようお願い申し上げます。また、明日の葬儀・告別式は、本会場にて△△時より行います。本日は誠にありがとうございました」
2-2 通夜振る舞い
通夜振る舞いを行う場合は、その開式と閉式のときに挨拶を行うことがあります。いずれも簡潔に述べるのが基本です。
通夜振る舞い開始のときには「皆さんと故人との思い出話を聞かせてほしい」という意味の言葉を組み込んでもよいでしょう。
【閉式の挨拶の例文】
「みなさま、本日はありがとうございました。今まで『子ども』の立場では知らなかった母の生前のお話を聞くことができまして、大変うれしく思います。
まだまだお話は尽きませんが、夜も更けてまいりましたので、勝手ではございますが、本日はこのあたりで終了させていただきたく存じます。
明日の葬儀は、会場××、△△時より執り行います。何卒よろしくお願いいたします。本日はありがとうございました」
通夜振る舞いが終わった後、参列者を喪主・家族・親族で見送り、一日目は終了です。なお通夜振る舞いにかかる時間は、30分~2時間程度が目安です。
閉式のときは、「夜も更けたのでおひらきにすること」を簡単に述べるとよいでしょう。
【開式の挨拶の例文】
「本日はお忙しいなか、母〇〇の葬儀に参列賜りまして誠にありがとうございます。ささやかではございますが、食事のご用意をいたしました。お時間の許す限りお寛ぎいただき、生前の母のお話などを聞かせていただければ大変ありがたく思います。どうぞよろしくお願いいたします」
2-3 告別式の後
告別式の後にも、通夜が終わったときと同じように、参列者に対して挨拶をすることになります。この場合も、
- ・葬儀に参列してくれたことへのお礼
- ・故人が生前に受けた厚意に対するお礼
- ・残された家族との交流をお願いする旨
でまとめます。
通夜の場合の挨拶の例文は長めにしたので、ここでは簡潔な文例を紹介します。
【告別式の後の挨拶の例文】
「本日は故○○○○の葬儀に際し、ご多忙中のところご会葬くださり厚く御礼申し上げます。顧みまして故人は生前中、皆様より格別なご厚情を賜り、また発病後はご懇切なお見舞いをいただき、故人もさぞかし皆様のご厚意を心から感謝しておることと存じます。
今後は生前の故人に接したと同様、残された遺族にもご厚情を賜りますよう、ひとえにお願い申し上げる次第でございます。簡単ではございますが、お礼の挨拶にかえさせていただきます。ありがとうございました」
なお、火葬場に行くために棺が霊柩車に乗せられ、葬儀場の入り口に見送る人が集まった段階で、喪主から挨拶を再度するケースもあります。この場合は「ありがとうございました」と一礼して簡潔に述べる程度で十分です。
2-4 火葬で解散する場合
火葬場につくと、[火葬炉の前で最後のお別れ~待合室で火葬が終わるのを待つ~収骨]の流れを取ります。収骨が終わった後に、火葬場で解散をする場合の文例です。
【火葬場で解散する場合の挨拶の例文】
「本日は亡き〇〇のためにお集まりいただき、ありがとうございました。おかげ様で、葬儀を滞りなく終わらせることができました。こちらで解散とさせていただきます。本日は誠にありがとうございました」
なおこのときにすでに四十九日法要の予定が決まっているのであれば、最後に、「四十九日法要は〇月×日に予定しております」などのように続けることもあります。
2-5 精進落としの席の献杯及び終了の挨拶
火葬後は、[繰り上げ初七日法要~精進落とし]となるのが一般的ですが、繰り上げ初七日法要のときには喪主の挨拶は行いません。次に喪主が挨拶をするのは、精進落としの席です。
精進落としの席での挨拶は、「開始時」と「終了時」の2つがあります。
精進落とし開始時は、「滞りなく葬儀が終わったことの報告」「席を用意してあること」を告げます。
精進落とし終了時は、「故人の話が聞けてうれしかった」「ここで閉会とする」「四十九日法要の案内」を中心に構成します。
【精進落とし開始時の挨拶の例文】
「本日は亡き〇〇のためにお集まりいただきまして、誠にありがとう存じます。おかげさまで、滞りなく葬儀を終わらせることができました。改めて深くお礼申し上げます。
ささやかながら粗宴を用意いたしましたので、お時間の許す限り、お寛ぎいただければと思います。また、故人のお話などを聞かせていただけると大変うれしく思います。本日は誠にありがとうございました。献杯」
【精進落とし終了時の挨拶の例文】
「本日はお忙しいなかお集まりいただきまして、誠にありがとう存じます。私たちが知らない母の顔を皆様から拝聴できましたこと、とてもうれしく思います。
もっとお話を伺いたいところではございますが、そろそろ時間がまいりましたので、これにてお開きとさせていただきます。四十九日法要は〇月×日を予定しております。
本日は誠にありがとうございました。どうぞ足元にお気をつけてお帰りください」
3 喪主挨拶のコツとマナー
ここまでの喪主の挨拶の例文を紹介してきましたが、どの挨拶のときにも共通のマナーがあります。喪主の挨拶のコツと合わせて解説していきます。
3-1 忌み言葉は使わない
葬儀の席では、「忌み言葉」は使いません。忌み言葉とは、以下のようなものをいいます。
・重ね言葉
「たびたび」「またまた」「くれぐれも」「かえすがえす」「再三」などのように連続した言葉や、連続することをイメージさせる言葉です。これは「不幸が重なる」とされていて、避けた方が良いと考えられています。
・忌み言葉
「追って」「浮かばれない」「消える」などのように、故人が迷うことをイメージさせる言葉は避けます。
・直接的に生死を表す言葉
「生きていたころ」「死ぬ」などのように、直接的に生死を表す言葉は避けます。
3-2 ゆっくり簡潔に話す
早口で話されると、聞いている方は非常に聞き取りにくいものです。そのため、意識的にゆっくりと話すようにしましょう。
また複雑な言い回しは避けて、簡潔で分かりやすい表現を用いる方が親切です。
3-3 原稿(カンペやメモ)を見ても差し支えない
喪主の挨拶を行う際は、メモ(カンペ)を見て読み上げる形式でも問題ありません。
もちろん葬儀の挨拶は「上手く行わなければならないもの」ではなく、「気持ちを伝えるために行うもの」です。ただ、それでも、前もって「何を話すか」のメモを用意しておいた方が安心でしょう。人前での挨拶に慣れた人であっても、葬儀の場では動揺のためになかなか言葉が出てこないこともあります。
3-4 感謝の気持ちを伝える
前述してきましたが、葬儀のときの挨拶において主題となるのは、「参列者に感謝の気持ちを伝えること」です。
わざわざ葬儀に足を運んでくれたことや、故人に生前良くしてくれたことへのお礼を中心に挨拶文を考えるようにしましょう。
3-5 無理に個性を出す必要はない
葬儀の挨拶では、無理に個性を出す必要はありません。故人のエピソードを交えて挨拶文を作ることで参列者も故人の新しい面を知れるというメリットはありますが、難しいようならば、定型文でまとめても問題はありません。
4 まとめ
葬儀においては、喪主が挨拶をしなければならないシーンが数多くあります。家族葬であっても基本的には挨拶をした方が望ましいとされているため、「どのタイミングで、何を言うか」「使ってはいけない言葉はどんなものがあるのか」を事前に把握しておくとよいでしょう。
ただ、葬儀の挨拶に正解や不正解はありません。たどたどしい挨拶であっても定型文であっても、また涙で声が出なくなっても、それが心からのものであるのならば、その挨拶を責める人はだれもいませんので、心配せずに行いましょう。