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献杯とは? 知っておくべき基本マナーと挨拶の例文を紹介
/(株)くらしの友 商事本部
東京都23区エリアを中心に、法事や葬儀などの施行業務を担当。法事・法要・仏壇や位牌のほか、墓地や墓石など、先祖供養に関連するさまざまな知識をもつエキスパート。
葬儀や法要が終わると、参列者が集まって会食をします。会食の席で行われる習慣が、参列者が故人に盃を捧げる献杯です。献杯には、献杯が終わるまで飲食はしない、故人の遺影に背を向けない、といった基本マナーがあります。
また、献杯と乾杯の違いについても押さえておく必要があるでしょう。献杯の挨拶でのスピーチに関しても、後述する例文を参考にして準備しておくのがおすすめです。
本記事では、献杯の意味や乾杯との違い、献杯の4つの基本マナーや喪主の挨拶の例文を分かりやすく説明します。
この記事で分かること
- 献杯とは、亡くなった人を偲んで盃を捧げる習慣のこと
- 献杯はお通夜や葬儀、告別式、法要、忌中払いが終わった後の会食の席で行われる
- 献杯の挨拶では献杯が終わるまで飲食はしない、挨拶を長くしすぎない、忌み言葉を使わないなどのマナーを守る
目次
1 献杯の意味とは
献杯(けんぱい)とは、亡くなった人を偲んで盃を捧げる習慣のことを指します。献杯を行うのは、葬儀や法要が終わった後の会食の席です。
例えば初七日法要終わると、参列者にお酒や料理を振る舞う精進落としが行われます。
- 1.葬儀
- 2.告別式
- 3.出棺
- 4.火葬
- 5.初七日法要
- 6.精進落とし
精進落としの席では、まず喪主が挨拶し、全員で献杯をしてから食事を始めます。法事の後のお斎(おとき)や追悼会、お別れ会なども同様です。
ただし、地域や宗派によっては、献杯をする習慣がない場合もあります。献杯はあくまでも、日常生活に根付いた慣習の一つにすぎません。献杯をした方が良いか不安な場合は、あらかじめ葬儀社や菩提寺、地元の方などに確認しておくことをおすすめします。
1-1 「献杯」と「乾杯」の違い
献杯と混同されやすいのが「乾杯」です。献杯の「献」には、「捧げる」「奉る」という意味があり、相手に対する敬意を表現する言葉です。そのため、故人を偲んで盃を捧げる場合は、乾杯ではなく「献杯」と呼びます。
一方、乾杯の「乾」には、盃を「乾(ほ)す」という意味があります。結婚式や飲み会など、お酒を一気に飲み干すような場では、献杯よりも「乾杯」の方が適切です。
葬儀の場では献杯、結婚式や飲み会などのにぎやかな場では乾杯と区別しましょう。また、献杯をする場合は、乾杯と違って「献杯!」と大きな声を出すことはありません。喪主が「献杯」と発声した場合は、静かに「献杯」と唱和し、グラスに軽く口を付けるのが献杯のマナーです。
2 献杯が行われる流れとは?タイミングを解説
献杯(けんぱい)とは、亡くなった人を偲んで盃を捧げる習慣のことを指します。献杯を行うのは、葬儀や法要が終わった後の会食の席です。
例えば初七日法要終わると、参列者にお酒や料理を振る舞う精進落としが行われます。
献杯が行われるのは、お通夜や葬儀、告別式、法要、忌中払いが終わった後の会食の席です。献杯は参列者全員が会場に集まり、席についた後で行われます。
献杯が行われる流れは以下の通りです。
- 1.葬儀社の担当者が案内し、参列者が会食の会場に移動する
- 2.参列者がそれぞれの席に着席する
- 3.参列者一人ひとりに盃が行き渡ったら、喪主が挨拶をする
- 4.喪主が献杯の音頭を取る
- 5.全員が盃を胸の前に掲げ、静かに「献杯」と唱和する
- 6.献杯の終了後、食事を始める
会食での献杯の際の座席は、明確な取り決めはありません。ただし、喪主や親族はもてなす側であるため、下座に座ることが一般的です。僧侶が同席する場合は、僧侶を最上座に案内します。
また、献杯の飲み物を注ぐ順番にもルールはありません。地域によって異なるものの、喪主が順番に飲み物を注いでいく場合もあります。会場によっては、葬儀社のスタッフが飲み物を準備するケースもあるようです。
3 献杯における4つの基本マナーと注意点
3-1 献杯が終わるまで飲食はしない
献杯をするときにまず気を付けたいマナーは、献杯が終わるまで飲食はしないというものです。参列者が会場に集まったら、食事や飲み物がテーブルに運ばれてきます。
この際にすぐ食事に口を付けず、喪主が献杯の挨拶をするまで待ちましょう。献杯が終わる前に食事を始めると、他の参列者や故人の家族に対して失礼になってしまうため、特に注意したいマナーの一つです。
また、献杯の際は飲み物を自分で注がないようにしましょう。着席した段階で、お酒やソフトドリンクが運ばれてくるため、参列者一人ひとりに飲み物が行き渡るまで待ちましょう。小規模の会場の場合は、喪主自らが飲み物を注いでいくこともあります。
3-2 挨拶は長くなりすぎないようにする
次は喪主の側が気を付けたいマナーです。献杯をする前に、喪主の方は参列者に挨拶をします。献杯の挨拶は、短い言葉で簡潔にまとめ、長くなりすぎないようにしましょう。
葬儀や法要の後の会食は、家族や参列者が故人を偲ぶための場です。献杯も単なる習慣ではなく、故人に盃を捧げ、ご冥福を祈るために行います。喪主の挨拶が長くなりすぎると、故人を偲ぶという本来の目的が薄れてしまいます。献杯の挨拶は、喪主が目立つための場ではなく、参列者が故人を偲ぶきっかけ作りだという認識を持つことが大切です。
亡くなった人への思いや、集まってくれた参列者への感謝などを中心として、長くても1分程度で献杯の挨拶をまとめましょう。
3-3 挨拶時に忌み言葉は使わない
また、献杯の挨拶をするときに注意したいのが、「忌み言葉」や「重ね言葉」です。
忌み言葉とは、死や不幸を連想させる言葉のことを指します。忌み言葉は縁起が悪いとされるため、葬儀や法要の際はもちろん、その後の会食でも使用を控えましょう。例えば、忌み言葉には以下のようなものがあります。
- ・死ぬ
- ・亡くなる
- ・苦しむ
- ・四、九(死や苦しみを連想させるため)
- ・浮かばれない(故人が成仏できないことを連想させるため)
- ・迷う(故人が成仏できないことを連想させるため)
また、忌み言葉と同様に使用を避けたいのが、同じ言葉を重ねた「重ね言葉」です。以下の重ね言葉は、不幸が「重なる」ことを連想させるため、献杯の挨拶では使えません。
- ・重ね重ね
- ・たびたび
- ・次々と
- ・くれぐれも
- ・しばしば
- ・どんどん
- ・わざわざ
- ・いろいろ
- ・もう一度
3-4 故人の遺影に背を向けない
献杯の際は、故人の遺影に背を向けないように気を付けましょう。故人の遺影に背を向ける行為は、故人や故人の家族、他の参列者に対して失礼にあたります。
特に注意したいのが、献杯の挨拶をする喪主です。献杯の挨拶をするために移動するときや、挨拶を終えて着席する際など、故人の遺影に背を向けないようにしましょう。
また、参列者で写真撮影をする場合も、立ち位置に気を付けましょう。故人の遺影に背を向けるのは、故人に対して背を向けるのと同じです。故人を偲ぶための場であることを忘れず、自分の立ち位置に配慮しながら献杯や写真撮影を行いましょう。
4 【関係性別】献杯における挨拶の例文
ここでは、喪主や親族、友人·知人、職場の上司などが献杯の挨拶でスピーチをするときの例文をご紹介します。
4-1 喪主の場合
献杯の挨拶は、葬儀を執り行う喪主がすることが一般的です。喪主が挨拶する場合は、まず集まってくれた参列者への感謝を述べ、「故人の思い出を偲びながら、食事を楽しんでほしい」という思いを伝えます。
喪主が挨拶するときの例文は以下の通りです。
本日はお忙しい中、葬儀にご参列いただきありがとうございました。皆さまにお会いできて、故人もさぞかし喜んでいることでしょう。
本日はささやかながらお食事をご用意しました。故人の思い出を偲びながら、ぜひ召し上がっていただければと思います。
それでは、献杯のご唱和をお願いします。
「献杯」
ありがとうございました。
4-2 親族の場合
献杯の挨拶は、必ずしも喪主が行うわけではありません。親族を代表して、故人と近しい間柄の人が献杯の挨拶をする場合もあります。親族が挨拶する場合は、まず故人との間柄を述べ、参列者への感謝を伝えましょう。
親族が挨拶するときの例文は以下の通りです。(続柄)や(名前)の部分は、必要に応じて変更してください。
故人の(続柄)の(名前)と申します。本日はお忙しい中、葬儀にご参列いただきありがとうございました。
葬儀を無事に終えることができ、故人も安心していることと存じます。本日はささやかながら、こうして会食の席を設けました。皆さまと一緒に故人の思い出を語らい、偲ぶ場にできたらと思っております。
それでは、献杯のご唱和をお願いします。
「献杯」
ありがとうございました。
4-3 友人・知人の場合
故人と仲が良かった友人·知人が、献杯のスピーチをすることもあります。友人·知人が挨拶する場合は、生前の故人との関係を説明し、家族や参列者に対してお悔やみの言葉を述べましょう。
友人·知人が挨拶するときの例文は以下の通りです。
ご紹介いただきました、(名前)と申します。故人とは、学生時代から長年の付き合いでした。
このような形で突然のお別れとなり、今でも信じられない気持ちでいっぱいです。ご家族の皆さまにおかれましても、謹んで哀悼の意を申し上げます。
それでは、ご指名を受けましたので、故人を偲んで献杯をさせていただきます。
皆さまも、献杯のご唱和をお願いします。
「献杯」
ありがとうございました。
4-4 職場の上司の場合
故人が勤めていた職場の上司が、会社を代表して献杯の挨拶をすることもあります。まずは社名を名乗り、社内での故人との関係性を説明してから、故人の家族への哀悼の意を示しましょう。
職場の上司が挨拶するときの例文は以下の通りです。
ご紹介いただきました、(社名)の(名前)と申します。故人とは、同じ部署に所属しており、私が部長、彼が課長の関係でございました。
故人はいつもリーダーシップを発揮し、部署のメンバーをリードする頼もしい部下でした。このような形で突然のお別れとなり、(部署)一同、本当に悲しくてなりません。
改めて、故人のご冥福を心よりお祈りいたします。それでは、献杯をさせていただきます。
皆さまも、献杯のご唱和をお願いします。
「献杯」
ありがとうございました。
5 献杯に関する7つのよくある質問
ここでは、献杯に関するよくある質問を7つご紹介します。
5-1 親族代表として献杯の挨拶をする場合のマナーは?
親族代表として献杯の挨拶をする場合は、以下の4点に注意しましょう。
- ・笑顔を見せず、声のトーンを普段よりも少し下げる
- ・挨拶は短くまとめ、長くても1分程度にとどめる
- ・忌み言葉や重ね言葉の使用を避ける
- ・親族としての思い出を話し、故人を偲ぶ言葉を挨拶に含める
5-2 献杯の音頭を取る人は?
献杯の音頭を取る人については、特に決まりはありません。ただし、弔辞を依頼した相手とは別の人が献杯の発声を行うことが一般的です。
例えば、弔辞を故人の兄が読み上げた場合は、故人の弟が献杯の音頭を取ります。
5-3 献杯はいつまで行われる?
献杯に期限はありません。葬儀や法要の後で参列者が集まり、会食をする機会があれば、毎回献杯を行うことが一般的です。
また、正式な場でなくても、故人の友人が集まって食事をする場合、献杯が行われることがあります。
5-4 一周忌の献杯挨拶の例文は?
一周忌の献杯挨拶では、「故人との思い出が、つい昨日のことのように思い出される」といった言い回しを入れるとよいでしょう。
場合によっては、他の方の四十九日と一周忌の供養を同時に行うこともあります。献杯の挨拶では、それぞれの故人の家族に対してお悔やみの言葉を述べましょう。
5-5 家族葬で献杯の挨拶をする人は?
家族葬で献杯を行う場合、挨拶をする人に決まりはありません。喪主が司会者を務める場合は、喪主が依頼した人物が献杯の挨拶をすることになります。故人と生前近しい間柄にあった親族から、献杯の挨拶をする人を選びましょう。
5-6 献杯時の飲み物は?
献杯の際の飲み物は、ビールや日本酒などのお酒を選ぶことが一般的です。ただし、献杯時の飲み物に決まりはないため、お酒が飲めない方に対してはソフトドリンクを提供しても構いません。飲み物の種類にこだわらず、故人を偲ぶ場にしましょう。
5-7 法要後の会食は何という?
法要が終わった後の食事会は「お斎(おとき)」と呼びます。お斎の際も、親族の代表者が献杯を行うことが一般的です。
地域によっては、葬儀を行った朝の食事や、出棺前に振る舞う食事のことをお斎と呼ぶ場合もあります。
6 まとめ
葬儀や法要の後の会食では、献杯を行うことが一般的です。献杯とは、故人を偲んで盃を捧げ、敬意を表することを意味します。
「献杯」と「乾杯」は別物です。乾杯はにぎやかな場で盃を合わせることを指すため、葬儀や法要の場にはふさわしくありません。
献杯には4つの基本マナーがあります。故人の家族や他の参列者の失礼にならないよう、献杯の作法を知っておきましょう。また、献杯のスピーチに悩んだら、本記事で取り上げた例文を参考にしてください。
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