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お線香をあげに行く意味とは? タイミングから基本マナーまで徹底解説
/(株)くらしの友 儀典本部
2004年くらしの友入社、厚⽣労働省認定の技能審査制度「葬祭ディレクター」1級取得。
故人様とご遺族に寄り添い、大規模な社葬から家族葬まで、これまで1,000件以上の葬儀に携わる。
お線香をあげる行為にはさまざまな意味があります。故人を偲ぶためにも、お線香をあげに行く意味をしっかり理解し、適切な手順を踏みたいものです。
本記事ではお線香をあげる意味や弔問のタイミング、押さえておくべきマナーも解説します。
この記事で分かること
- お線香をあげる行為にはさまざまな意味がある
- 故人との関係によって、お線香をあげに行く時期・タイミングが変わる
- 弔問時は故人とご家族を思いやってマナーを守ることが大切
目次
1 お線香をあげる意味とは?
仏教において、お線香をあげる行為には、さまざまな意味があります。亡くなった直後の故人の魂は、この世とあの世をさまよっていると考えられています。故人の魂があの世にたどり着くまでの四十九日の間、故人の食事代わりとされているのがお線香です。この時期のお線香は「食香(じきこう)」と呼ばれており、故人に食事を供える意味でお線香を焚き続けます。
四十九日を過ぎると、お線香をあげる意味合いが変わります。故人の魂はあの世へと旅立ち、仏様に生まれ変わると考えられているためです。仏様にお線香をあげる行為は、香りを通して仏様となった故人と交流することを意味します。
他にもお線香を焚く行為には、香りで身を清めたり、仏間を清めたりする意味合いも込められています。
2 一般的なお線香の種類
お線香の香りにはさまざまな種類があります。一般的に使用されるお線香をいくつか紹介します。
2-1 白檀
白檀(びゃくだん)は英語で「サンダルウッド」といい、アロマセラピーでも使われることの多い香りです。甘みがありながら爽やかで、リラックス効果があるといわれています。
2-2 沈香
沈香(じんこう)には気持ちを鎮める効果があり、その香りの複雑さから、香の香りを楽しむ香道でも人気です。なお沈香は常温ではあまり香りません。150度以上で加熱することで、香りが広がりやすくなります。
2-3 伽羅
伽羅(きゃら)は沈香のうちの一つですが、その中でも上級品とされる香木を使った香りです。沈香でありながら常温でも清々しい香りを楽しめるところが特徴で、加熱するとさらに香りが立ちます。
3 お線香の選び方
お線香は仏教の各宗派でもこれといった取り決めはありません。好みの香りで選んでもよいですが、使う用途で選んでもよいでしょう。代表的なお線香である、匂い線香と杉線香について解説します。
3-1 匂い線香
匂い線香とは、香りに秀でたお線香のことです。代表的な白檀や沈香、伽羅の他にも花や果物などさまざまな香りがあります。主に家庭用として購入されることが多く、集合住宅でも使いやすい煙が少ないタイプです。
3-2 杉線香
杉線香は、杉の葉の粉末にお湯とノリを混ぜて練り、線香状に成型したものです。寺院での仏事やお墓参り用で、香りよりも煙を多く出すために用いられます。室内で使うと煙感知器が作動してしまうこともあるので、屋外でお墓参りのときに使うとよいでしょう。
4 【関係性別】お線香をあげに行く時期・タイミング
故人の遺志やご家族の決定で家族葬になった場合、葬儀に参加できる人は限定されてしまいます。葬儀に招かれなかった場合は、後日自宅へ弔問してお線香をあげることになります。しかし、中には「弔問に行くタイミングに迷う」「時間帯はいつ頃がよいのだろう」と思う方もいるでしょう。
弔問に伺うのに適した時期・タイミングはいつなのでしょうか? 故人との関係性別に解説します。
4-1 親族
親族は基本的に、故人の訃報を受けたらすぐ弔問に伺いましょう。出張中で遠出している、体調が優れないなど、すぐに伺えない事情がある場合は、電話で家族に一報を入れて、駆け付けられない旨とお悔やみを述べましょう。
4-2 友人・知人
友人・知人は故人と親しい間柄で、なおかつご家族から連絡が入った場合のみ、すぐに弔問します。ご家族からの連絡がない場合は、すぐに弔問するのは避けましょう。あくまでもご家族の意思を尊重し、負担をかけないように配慮するのがマナーです。落ち着いた頃を見計らって連絡を入れ、ご家族の許可を取ってから弔問しましょう。
4-3 それ以外の人
上記以外の人が後日訪問するのは、葬儀の数日後から四十九日までの間がよいでしょう。葬儀直後はまだご家族が慌ただしい状況のため避け、数日経ってから連絡を入れて確認したうえで伺うようにしましょう。
四十九日を過ぎてから訃報を知った場合も、弔問してもよいかご家族に確認を取りましょう。故人との関係性をご家族に説明し、弔問したい旨を伝えます。断られた場合は、ご家族の意思を尊重し弔問は控えましょう。
5 自宅に弔問する際の流れ
お線香をあげるために弔問する際の流れは、タイミング(弔問する時期)によって異なります。いずれの場面であっても、ご家族の負担にならないように配慮しましょう。
ここからは、故人ご家族の自宅を訪れるタイミング別に、弔問の流れを見てみましょう。
5-1 葬儀前
親しい間柄でない場合は、葬儀前に自宅へ弔問するのは控え、葬儀に参列しましょう。葬儀前に自宅へ弔問するときは、事前に伺う旨を連絡してから訪問しましょう。玄関先でお悔みを述べたら、ご家族にすすめられたときのみ家に上がります。故人との対面も、ご家族にすすめられた場合のみ行います。
故人との対面を許されたら、枕元で正座し、両手をついて一礼しましょう。ご家族が白布を外したら、両手は自身のひざの上に置き、故人に深く一礼して合掌します。その後少し下がってご家族に一礼し、長居をせずに引き上げてください。
5-2 葬儀後
葬儀後の落ち着いた頃を見計らい、弔問に伺ってよいかご家族に確認しましょう。許可をもらったら約束の日時に自宅まで伺います。お悔やみの言葉を伝え、ご家族からすすめられたときのみ家に上がりましょう。
まずはお線香をあげて、お悔やみの言葉と弔意、ご家族への気遣いの言葉を手短に伝えます。ご家族の負担にならないよう、故人との思い出話は数分ほどにとどめる方がよいでしょう。長居はせずに早めに切り上げてください。
5-3 弔問を控えるべきケース
ご家族から直接連絡がない場合は、弔問を控えましょう。ご家族に配慮して気遣うことが大切です。
また、自身の体調が悪いときも無理に駆け付けるのはやめましょう。もし訪問先で悪化してしまった場合、かえってご家族に迷惑をかけてしまいます。香典を現金書留で送ったり、弔電でお悔やみの気持ちを伝えたりする方法もあります。
6 弔問の基本マナー4つ
弔問の際には気を付けたいマナーがあります。故人への哀悼の意を伝えるためにも、マナーを覚えてから弔問しましょう。
6-1 服装のマナー
1つ目は服装のマナーです。故人のご家族の自宅に弔問する際は、黒や紺などの落ち着いたダークカラーの平服を着用します。訪問のタイミングに関係なく喪服は避けましょう。また肌の露出を避け、飾り気のない服装で訪問するのがマナーです。装飾品も控え、メイクもナチュラルメイクを心掛けてください。
6-2 持ち物のマナー
2つ目は持ち物のマナーです。弔問の際に手土産を持って行った方がよいのか気になる方もいるでしょう。しかし、一般的に弔問時の手土産は必要ありません。
ただし、お供えとして故人の好きだったものを持参することはあります。故人が好きだったお菓子や果物などがおすすめです。控え目な価格帯のものにすると、ご家族を困らせずに済みます。また生ものなど日持ちのしないものや要冷蔵の品は避けましょう。
なお故人宅の宗派が分からない場合は、数珠を持たずに行っても構いません。
6-3 言葉遣いのマナー
ご家族にお悔やみを伝える弔問では、言葉遣いに細心の注意を払いましょう。「この度はご愁傷様です」「お悔やみ申し上げます」などのあいさつを伝える際は、ハキハキと伝えるよりも、語尾を濁す方が弔意を伝えられます。またお悔やみの言葉は短く簡潔に伝えるのがマナーです。
他にも「死」のような直接的な言い方は適しません。「お亡くなりになる」「突然のこと」などの言葉に置き換えて使いましょう。忌み言葉や重ね言葉も、不幸が続くことを連想させるため避けましょう。
6-4 お線香のあげ方のマナー
「故人は香りを食べる」という仏教の教えから、弔問の際はお線香をあげるのが一般的です。ただし、ご家族に自宅に上がるようすすめられなかった場合は、そのまま受け入れましょう。「ご家族が望まないときは、お線香をあげない」というのもマナーです。
お線香のあげ方は地域によって多少異なりますが、基本的な流れは以下のとおりです。
- 1.数珠は左手に持つ
- 2.仏壇の前に座布団があれば、その手前でご家族に一礼する
- 3.座布団を手前で右側にずらして仏壇の正面に座り、一礼した後、合掌する
- 4.ろうそくに火をつけ、お線香に火を移す
- 5.左手であおいでお線香の火を消し、香炉にお線香を立てる
- 6.おりんを一度鳴らして合掌する
- 7.仏壇に一礼した後、少し下がってからご家族の方に向き直って一礼する
7 お線香をあげに行くときのマナーに関するよくある質問5つ
故人やご家族に失礼にならないよう、お線香をあげに行くときのマナーについて今一度確認しておきましょう。よくある質問としてまとめました。
7-1 お線香をあげに行くときの手土産は何がよい?
お線香をあげに行くときに手土産は必要ありませんが、お供え物として故人が好きだったものを持って行くのは問題ないでしょう。ただし生ものや傷みやすいもの、要冷蔵のものなどは避けましょう。
7-2 お線香をあげに行く前に連絡は必要?
お線香をあげに行く前にご家族へ連絡を入れ、都合のよい日時を確認しましょう。お線香をあげたい旨の他、故人との間柄や訪問する人数も伝えます。もしご家族から断られたときは、受け入れるのがマナーです。
7-3 「手を合わせに行く」の別の言い方は?
「手を合わせに行く」という表現は、仏様を介して故人を偲ぶ行為そのものであることから、「お線香をあげに行く」という言葉と同義といえます。伝える相手によって使い分けるとよいでしょう。
7-4 弔問できないときはどうすればよい?
訃報を知ったタイミングによってはどうしても葬儀に参列できない、弔問の日程が立たないといったこともあるでしょう。葬儀に参列できないときは、はっきりと欠席の旨を伝えてください。その後に取れる対応には以下のものがあります。
- 1.葬儀の前日までに斎場に喪主宛の弔電を打つ
- 2.お悔やみと欠席を詫びる手紙を添え、お金を入れた香典袋を現金書留で喪主宛に送る
- 3.供花や果物などを喪主宛に送る
7-5 四十九日を過ぎてからの香典は失礼?
家族葬や密葬の場合、一般的には親族・故人と親しくしていた友人以外は、葬儀の後に訃報を知ることになります。後で訃報を知った場合は、香典はどのようにすればよいのでしょうか。
ご遺族の意向で、香典の受け取りを辞退するケースがあります。その場合は、香典を送ってはいけません。香典を受け取ってもらえるようであれば、一般的には直接伺って手渡します。香典を渡そうとしたときに、ご遺族から「香典は辞退したい」という意向を示されたのなら渡さず、受け取る姿勢を示されたのなら渡せばよいからです。
仏式の香典は、四十九日の前と後で表書きの書き方が異なります。四十九日の前は御香典・御香料・御霊前です。四十九日を過ぎたら、表書きは「御霊前」ではなく「御仏前」にします。四十九日前は故人の霊に供えることから「御霊前」、四十九日後は故人は仏様になったと考えられているので「御仏前」と表されます。
ただし故人が浄土真宗の場合は、「御霊前」という表書きは使いません。浄土真宗では、人は亡くなったと同時に浄土に召され、仏様になると考えられているからです。もし故人の宗派が分からないときには、御香典か御香料が無難といえます。