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遺書とは?遺言書との違いや、書き方のポイントを解説
/(株)くらしの友 営業本部
2001年くらしの友入社、互助会部門の責任者を15年務める。終活に関連する介護・葬儀・社会保障制度など、さまざまな領域の知識をもつエキスパート。
終活をしたり、身近な人の死を経験したりする中で「遺書の書き方が分からない」「そもそも遺書を書くメリットってあるの?」とお考えの方もいるでしょう。
この記事では、遺書の意味や遺言書との違い、書くタイミング、書き方のポイントなどについて解説します。
この記事で分かること
- 遺書とは遺言者の意思を記した手紙
- 遺書と遺言書の大きな違いは法的効力の有無
- 遺書を書くタイミングに決まりはない
目次
1 遺書とは?
遺書とは、遺言者の意思を記した書面のことです。ただし、遺書に法的効力はありません。死を覚悟した人が残す手紙でもあることから、あくまで自分の意思を伝える書面という定義になっています。実際に、お世話になった方たちや家族への感謝の気持ちを遺書に書く方も多いようです。
2 遺書を書いておいた方が良い理由・メリット
遺書を書いておいた方が良い理由・メリットは以下のとおりです。
遺書を書くメリット
- ・家族・お世話になった方に自分の想いを伝えられる
- ・考えがまとまる
- ・自分の人生を見つめ直せる
- ・身近な人の大切さに改めて気が付くきっかけになる
自分の意思を誰かに伝えられるという点はもちろん、紙に書き出すことで思考が整理されるメリットもあります。また遺書に書く内容を考えているうちに、自分の人生を見つめ直すきっかけにもなるでしょう。さらに家族や身近な人の大切さに改めて気付き、一日一日を大切にしようと気持ちを新たにできる利点もあります。
遺書と聞くとネガティブなイメージを思い浮かべる方もいるかもしれませんが、上記のようなメリットもあるため、まずは一度書いてみることをおすすめします。
3 遺書と似ている「遺言書」「エンディングノート」との違い
なお、遺書に似ているものとして遺言書とエンディングノートがありますが、どちらも遺書とは異なるものです。ここでは、遺書との違いについて詳しく解説します。
3-1 遺言書
遺書と遺言書の大きな違いは、法的効力の有無です。遺書は法的効力を持っていないため、遺産相続において考慮されません。一方の遺言書は以下の8つの法的効力を持ちます。
遺言書が持つ8つの法的効力
- ・推定相続人の廃除
- ・相続人の指定
- ・遺産分割方法の指定と遺産分割の禁止
- ・相続財産の遺贈に関すること
- ・内縁の妻(または夫)と子に関すること
- ・後見人の指定
- ・担保責任が発生した際の負担者・負担の割合
- ・遺言執行者の指定
また、遺書と遺言書では、記載する内容にも違いがあります。遺書は主に、自分の気持ちを伝える内容が多く記載されます。一方、遺言書は財産を誰に引き継ぐかなど、相続に関する本人の希望が記載もされます。このように、遺書と遺言書は特徴が異なるため、混合しないよう注意しましょう。
3-2 エンディングノート
エンディングノートと遺書の違いは、記載する際の視点です。遺書は今までお世話になった方に向けての感謝の言葉が多く記されます。一方、エンディングノートは自分の人生の終わり方について記載したノートです。どのような人生の終わりを迎えたいか、やり残したことはないかなど、自分の人生を振り返って記載します。
なお、エンディングノートも遺書と同様に法的効力はありません。書き方に決まりもなく、遺書と同様に自由な書式で作成できます。
遺書・遺言書・エンディングノートでは、似ているようでそれぞれ特徴が異なります。ご自身の用途に合わせて、使い分けるとよいでしょう。特に遺産に関することを記載したいのであれば、法的効力をもつ遺言書を作成することを強くおすすめします。
4 遺書のおすすめの形式
結論から述べると、遺書には決まった書き方がなく、書きたい内容を自由に記載できます。書き始める前に、ある程度構成を考えておくとスムーズに書き進められます。
おすすめの構成は、以下のとおりです。
遺書のおすすめな構成
- ・書く相手の名前
- ・伝えたい内容 「①伝える必要のある事実(通帳の場所や大事な金庫のパスワードなど)」「 ②自分の想い(感謝の気持ちなど)」
- ・遺書を書いた日付
- ・自分の名前
また、遺書にルールはないため、相手との関係性に応じてカジュアルな文章に変化してみるのも良いでしょう。相手が受け取ったときに、読みやすい文章だと気持ちが伝わりやすくなります。
なお、文章を書くのが苦手な方は動画を撮る方法もあります。本人が話している映像は貴重な思い出となり、感情も伝わりやすいです。遺書の内容は短くしておき、動画は長いものにするのも一つの方法です。遺書の書き方は自由だからこそ、迷う方もいるかと思いますが、相手と自分に素直な気持ちで書くと想いが伝わるでしょう。
5 遺書の書き方とポイント
ここでは、遺書の書き方を、ステップごとのポイントとあわせて解説します。
- 1、誰に向けて書くかを考える
- 2、伝えたいことをまとめる
- 3、保管場所を決める
これから紹介する内容を参考にして、自分なりの遺書を書いていきましょう。
5-1 誰に向けて書くかを考える
遺書を書く相手にルールはありません。そのため、書きたい相手がいればその方に向けて遺書を書きましょう。配偶者や子ども、両親、昔からの友人など伝えたい方を明確にすることで、記載するべき内容が思い浮かびやすくなります。
余裕があればまとめてではなく1人ずつに宛てて、温かみがあって人柄が伝わる手書きで書くのがおすすめです。
遺書に宛てる特定の相手を決められないが、言い残したいことがあるという場合も、遺書を書いておくとよいでしょう。
5-2 伝えたいことをまとめる
遺書を書く相手が決まったら、続いては伝えたいことをまとめます。伝える内容は、大まかに分けて以下の2つです。
- ・伝える必要のある事実
- ・本人に伝えたい気持ち
まずは自分が亡くなった後に家族が困る物事を挙げ、それぞれの対応について遺書に記載しておきましょう。通帳の場所や金庫のパスワードなどの管理情報などを記載しておくことで、残された方たちもスムーズに対処できます。
伝える必要のある事実を記載した後は、本人に伝えたい気持ちを記載しましょう。
年齢を重ねるごとにプライベートが忙しくなり、日頃の感謝を伝える機会は少なくなっていきます。そのため、普段伝えられない想いを遺書にまとめます。
かしこまって書こうとするとペンが進みにくくなりますので、まずは思ったことをそのまま書き、後から修正すると素直な文章になりやすいです。あまりかしこまらずに、遺書は「普段伝えられないことを素直に伝えるための手紙だ」と考えると、書きやすいでしょう。
5-3 保管場所を決める
遺書を書き終わった後は、大切に保管します。普段は目につきにくい保管場所に置いたり、大切な人にだけ場所を伝えたりと、さまざまな保管方法があります。
自宅での保管が難しい場合は、弁護士や税理士といった専門家に預かってもらう方法もあります。せっかく書いた遺書だからこそ、受け取って欲しい相手に確実に見つけてもらえる場所を考えて保管しましょう。
6 遺書を書くタイミング・時期
遺書を書くタイミング・時期は決まっていません。そのため、自分が遺書を書きたいと思ったときに書きましょう。
一般的に、遺書を書く年齢は70〜80代が多いとされます。一方で、30代など比較的早くから遺書を準備している人もいます。若いうちに遺書を書く理由としては、ライフイベント・人生の節目がきっかけであることが多いようです。結婚や出産によって相続関係が大きく変わったり、退職によって財産が変化したりするためと考えられます。
もちろん、ライフイベントが起こる時期は人によってさまざまです。また、不慮の事故に遭ったり、病気になったりする可能性も考えておく必要があります。自分が「遺書を書いておこう」と思ったタイミングを逃さず、準備しておくのがおすすめです。
7 【年代別】遺書に書いておくと良い事柄・内容
ここでは、年代別に遺書に書いておくと良い事例・内容について紹介します。
7-1 20代・30代・40代
20代・30代・40代の方が遺書を書く場合は、以下の内容を記載しておくと良いでしょう。
- ・自分の身の回りに起きたこと
- ・スマートフォンのパスワード・利用しているサービスの情報
- ・友人・知人の連絡先
- ・持病について(病気があれば)
若いうちから家族の知らない情報を記載しておくことで、何か必要な情報があったときも家族がスムーズに対処しやすくなります。例えば地元から離れたところに住んでいる場合は、友人・知人の連絡先を記載しておけば、家族が連絡を取りやすいでしょう。
また、持病がある場合はその旨も記載しておきます。場合によっては、死因の特定に役立つ可能性があるためです。
7-2 50代・60代
50代・60代の方が遺書を書く場合は、以下の内容を記載しておくことをおすすめします。
- ・人生の終末についての希望
- ・葬儀についての希望
- ・高齢になったときの施設
50代・60代はまだまだ元気な年代であるものの、高齢になったときのことを記載しておくと、万が一何かあってもスムーズに対処ができます。ただし、遺産についての記載をしても法的効力はないため注意点が必要です。あくまで自分自身に関することを記載しましょう。
7-3 70代以上
70代の方が遺書を書く場合は、以下の内容を記載しておくと良いでしょう。
- ・持病・かかりつけの病院
- ・余命宣告を受けたいか
- ・延命治療の希望について
- ・認知症になったときの対処について
高齢になればなるほど、けがをしたり病気にかかったりする方が増えてきます。認知症などの病気が心配な方もいるでしょう。かかりつけの病院や延命治療についての希望を記載しておくことで、いざというときに家族が対応しやすくなるケースもあります。
8 伝えたい想いを大切に、自由に遺書を書こう
遺書の書き方に決まりはなく、自由に書いて問題ありません。伝える相手と、伝えるべき事実・想いを押さえておくと、書きやすくなります。
遺書の保管場所は自宅のほか、税理士・弁護士などの専門家に依頼する方法もあります。気持ちを込めて書いた遺書だからこそ、受け取って欲しい相手に渡るように工夫しましょう。
くらしの友では、葬儀の事前相談も行っています。葬儀に関する不安や疑問点のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。