- 葬儀
弔事とは?言葉の意味から基本マナーまで分かりやすく解説
/(株)くらしの友 儀典本部
2004年くらしの友入社、厚⽣労働省認定の技能審査制度「葬祭ディレクター」1級取得。
故人様とご遺族に寄り添い、大規模な社葬から家族葬まで、これまで1,000件以上の葬儀に携わる。
「弔事とはどういう意味だろう?」「マナーとかはあるのかな?」などの疑問をお持ちの方もいるでしょう。弔事という言葉は、葬儀に直接関わったことがない方にはなじみが薄いかもしれません。
そこで本記事では、弔事の意味や基本マナー、弔事で家族・参列者が行うことなどについて詳しく解説します。
この記事で分かること
- 弔事とは、葬儀などのお悔やみ事のこと
- 弔事で家族は、訃報の連絡・葬儀・法要の準備を行う
- 弔事に参列できない場合は弔電や、供花・供物を贈る方法がある
目次
1 弔事とは? 読み方や意味を解説
弔事は「ちょうじ」と読み、葬儀などのお悔やみ事のことを指します。亡くなった方を弔うとの意味から、弔事と呼ばれるようになりました。
弔事には、故人の逝去から葬儀、法事初七日、四十九日法要などまでが含まれます。なお葬儀には、前夜に行われる通夜から、故人と最後のお別れをする告別式、火葬、納骨まで一連の流れが含まれます。
弔事と法事は意味が混合されやすいですが、法事はあくまで故人の供養を行う行事を指す言葉です。法事は弔事に含まれるものの、意味は異なるため間違えないように注意してください。
1-1 慶事との違い
弔事とは逆の意味の言葉に、「慶事(けいじ)」という言葉があります。結婚や出産などのお祝い事を意味する言葉です。具体的には以下のようなイベントが挙げられるでしょう。
- ● 入学式・卒業式
- ● 成人式
- ● 結婚式
- ● 出産祝い
- ● 銀婚式・金婚式
- ● 長寿祝い(還暦・米寿など)
慶事と弔事のマナーは似ている部分もありますが、混合して間違うのは失礼になるため注意してください。例えば葬儀では全身に黒をまといますが、結婚式で黒を着る場合はお葬式を連想させないよう、アクセサリーや小物で華やかにする必要があります。
2 弔事で家族が行うこと5つ
ここでは、弔事で家族が行う以下の5つのことを紹介します。
- ● 故人の近親者や友人への訃報の連絡
- ● お通夜・葬儀・告別式・火葬の準備
- ● 会食・返礼品の準備
- ● 火葬後の準備(遺骨迎え)
- ● 法事の準備(初七日・四十九日法要など)
故人の家族は、短期間で弔事に関するさまざまな準備を行う必要があります。事前に流れを押さえておき、スムーズに対処できるようにしましょう。
2-1 故人の近親者や友人への訃報の連絡
近親者や親しい友人に故人が逝去したこととあわせて、葬儀の日時や場所を伝えます。お世話になった方には電話やメールなどで連絡をします。また故人が会社に勤めていた場合は、勤め先と仕事関係者への連絡も忘れないようにしてください。
なお、訃報を知らせる際メールでの連絡はマナー違反だと感じる方がいるため注意が必要です。さらにメールに気付かない可能性もあるため、連絡手段は相手に合わせて確実に伝わる方法を選ぶと良いでしょう。
またSNS(LINEなど)での訃報は一度に多くの方に伝えられるものの、マナー違反だと思われたり、間違った内容が広まってしまうことにより誤解を生んだりするリスクがあります。利用する際はごく親しい人にのみダイレクトメッセージを送るなど、配慮が必要です。
2-2 お通夜・葬儀・告別式・火葬の準備
病院で亡くなった場合、遺体には病院内の霊安室へ一時的に移動されます。病院に安置できる時間は限られているため、その間に葬儀社を探しましょう。
葬儀を依頼する葬儀社がすぐに決められない場合は、遺体の安置のみを葬儀社へ依頼することも可能です。ただし、実際にお葬式を行う葬儀社の決定に関しては、遺体が安置されてから速やかに決める必要があります。
葬儀社が決まったら、葬儀の日時や場所、宗教や形式などの打ち合わせをします。
葬儀の日時と場所が決まったら、親族や友人、知人に連絡します。
遺体を火葬して納骨するには、火葬場で火葬済みの認証受けた火葬・埋葬許可証を、納骨先の墓地の管理者に提出する必要があります。火葬・埋葬許可証は、死亡診断書や死体検案書と、必要事項を記入した死亡届(基本的に死亡診断書と死亡届は一枚の書類にまとまっています)を市区町村役場へ提出し、受理されると発行されます。
なお、これらの手続きは、死亡診断書・火葬許可申請書の提出は、葬儀社によっては代行を依頼することも可能です。
2-3 会食・返礼品の準備
葬儀では会食を伴うことが多くあります。料理のほかにお酒、ソフトドリンクなどの準備が必要です。
通夜の日には、通夜振る舞い(お清め)の準備をします。かつては、肉や魚を使わない精進料理を出す習慣があったものの、現在はお寿司やサンドイッチ、オードブルなどの大皿料理を出すことが一般的です。地域によってはお茶のみを出したり、お菓子を出したり、お弁当を用意することもあります。
なおキリスト教式であれば通夜振る舞いは行いませんが、親しい人たちだけで会食の場を用意することもあります。
告別式・火葬後に精進落としを振る舞う場合も、準備が必要です。通夜振る舞いとは違い、精進落としを振る舞う人数はある程度把握できるため、一人一膳の形式で用意します。料理はお祝い事を連想させる伊勢海老や鯛は避けますが、お刺身やお寿司であれば問題ありません。参列者の年齢層や好みに合わせて用意すると良いでしょう。
次に返礼品とは、参列者にお礼状を添えて渡す品物です。参列者への返礼品として「会葬御礼」と「香典返し」の用意が必要です。会葬御礼は、香典の有無に関わらず、通夜や告別式へ参列した方へ渡す品物です。また香典返しは、香典(不祝儀)をいただいた方に対するお礼の品物を指します。
会葬御礼はささやかな感謝の気持ちを示す品物なので、500~1.000円程度の予算で選べば問題ありません。香典返しであれば、受け取った金額の3分の1から半額程度のものをお返しするのが一般的です。
返礼品には、悲しみを後に残さないという意味を込めて、日持ちする食品や消耗品など、消えものを用意すると良いでしょう。お茶やコーヒー、お菓子、タオルなどがおすすめです。
2-4 火葬後の準備(遺骨迎え)
家族・親族は火葬場から戻ったら、塩と水でお清めを行います。背中や肩に塩を振ってもらう清めの塩と、ひしゃくで汲んだ水を両手にかける清めの手洗いをします。なお、内容は地域や宗派によっても異なるため、事前に確認しておきましょう。
身を清めた後は、遺骨迎えを行います。また、地域によっては、火葬後に葬儀を行ったり、火葬直後に納骨を行ったりするところもあります。ご遺骨を自宅に持ち帰り、忌明けとなる四十九日まで、後飾り祭壇に安置します。四十九日の忌明けまで日々ろうそくの灯を灯し、線香をあげて、故人の冥福を祈ります。葬儀後に訪ねてくる弔問客にも、遺骨に手を合わせてもらいます。
その後四十九日法要を行いと同じ日に納骨をすることが一般的です。なお「いつまでに必ず納骨しなければいけない」という決まりはありません。
2-5 法要の準備(初七日・四十九日法要)
最後は法要の準備です。初七日の法要とは、亡くなった日を含めて7日目に行う仏教の儀式のことです。仏教では、亡くなった人はすぐには成仏せず、四十九日法要を行いと同じ日に納骨をすることが一般的です。なお「いつまでに必ず納骨しなければいけない」という決まりはありません。故人は7日ごとに極楽浄土に行けるかどうかの審判を受けるといわれています。そのため、本来は故人が極楽浄土に無事にたどり着けるよう仏様に祈る儀式が、初七日法要です。四十九日法要まで7日ごとに合計7回の法要を行います。これを中陰供養(ちゅういんくよう)、もしくは御逮夜(おたいや)と呼びます。なお現代では、様々な事情で7日ごとに法要を行うのは難しいため、葬儀の当日に初七日法要を、そして7回目の49日法要を親族が集まって盛大に行うことが多いです。
法要の準備に際し、まずは日時・場所・参列者を決めます。日時は僧侶の予定を最優先に決定し、予定が立ってから参列者に案内状を出して人数を確認しましょう。法要後に会食がある場合は、案内状にそのことを記載します。
次に参列者にお渡しする引き物を2,000〜5,000円ほどの予算で用意しておきましょう。また、僧侶に渡すお布施も忘れないようにしてください。金額に決まりはありませんが、相場は3万〜5万円ほどと言われております。心配な場合は、寺院に直接尋ねてもよいでしょう。
3 弔事で参列者が行うこと4つ
ここでは、弔事で参列者が行うことを4つ解説します。
- ● 喪服の用意
- ● 香典の用意
- ● お悔やみやあいさつの言葉を考える
- ● 弔辞を書く
以下で詳しく見ていきましょう。
3-1 喪服の用意
通夜や葬儀に参列する場合は、喪服を用意しましょう。喪服は黒のダークスーツやワンピース、アンサンブルなどが適していますが、用意できなければグレーや紺などのダークカラーのスーツ、ワンピースなどでも良いでしょう。ネクタイやベルト、バッグ、ストッキング、靴なども黒で統一して、派手な素材のものや革製品、毛皮などは避けてください。靴は黒の革靴やパンプスを選びます。パンプスのヒールは高すぎないもの(3cm程度)で、光沢感の少ないシンプルな見た目のものが良いでしょう。
学生の場合は、制服を着用します。制服がない場合は、落ち着いたカラーのスカートやズボンに白いシャツ、ジャケット、革靴などを合わせましょう。小学生・園児の場合はスニーカーでも問題ありませんが、控えめな色を選ぶようにしてください。
服装のマナーについては、こちらでも詳しく解説しているので参考にしてください。
3-2 香典の用意
続いて参列者がすることは、香典の準備です。香典は通夜もしくは葬儀に持参するもので、線香やお花の代わりに供えるものになります。この香典を入れるのに必要なのが「香典袋(不祝儀袋)」です。香典袋には種類があり、宗教や宗派によってどのタイプを使うかが異なります。
水引には、印刷されたタイプと実際に水引が結ばれているタイプの2つがあります。包む金額が少ないときは印刷タイプののし袋を選び、高額の場合は水引が結ばれたタイプののし袋を使用しましょう。また香典で包む額は、故人との関係によって異なるため一概にはいえませんが、友人や知人であれば5,000~10,000円、親戚であれば10,000~30,000円ほどが目安です。
香典袋の書き方や金額については、こちらの記事でまとめているため、参考にしてください。
3-3 お悔やみやあいさつの言葉を考える
弔辞のお悔やみやあいさつは、普段使い慣れていない言葉を使うため、事前に考えておきましょう。お悔やみの言葉は状況によっても異なりますが、「このたびは誠にご愁傷様でお悔やみ申し上げます」「寂しくなりますね」などがよいでしょう。
なお、故人の家族に死因をたずねることはマナー違反ですので注意してください。
状況別のお悔やみの言葉はこちらにて解説しているため、ぜひ参考にしてください。
3-4 弔辞を書く
遺族から、葬儀の最中に弔辞を読んでもらいたいという依頼を受けることがあります。弔辞とは、故人との思い出や、感謝や労い、失った悲しみなどを言葉にするもので、最後のお別れのあいさつしての意味も込められています。
弔辞の読み上げは、基本的に故人と親しい間柄にある友人や家族が選ばれます。弔辞に決まった書き方はありませんが、哀悼の気持ち、故人との関係・思い出、お悔やみの言葉の順番を意識すると書きやすいです。
適切な文章量は、声に出して読んだときに3分ほどの長さです。(原稿用紙で1.000字程度)長すぎても冗長な印象になってしまう可能性があり、短すぎても内容が薄い印象になってしまいます。ほど良い長さでまとめるようにしましょう。
さらに弔辞の注意点として、マイナスなエピソードは避けることが挙げられます。故人の魅力や、誠実さが伝わるエピソードを選ぶように心掛けてください。
弔辞の書き方はこちらでも詳しく解説しているので、参考にしてください。
4 知っておきたい弔事の基本マナー3つ
ここでは、知っておきたい弔事の基本マナーについて解説します。基本マナーは以下の3つです。
- ● 服装
- ● 靴
- ● 弔事と慶事の優先順位
それぞれの項目を詳しく見ていきましょう。
4-1 服装
弔事の服装は、立場と弔事の内容により異なります。参列者として参列するのであれば、通夜では略喪服、もしくは準喪服、告別式では準喪服を着ます。
弔事を主催する立場の場合は、通夜では準喪服、告別式では正喪服を着ます。正喪服とは、最も格式高い喪服のことで、男性はモーニングコートか紋付羽織袴、女性はブラックフォーマルか五つ紋の黒無地の着物です。ただし最近では、喪主も準喪服を着用するケースが多く見受けられるので、無理に用意する必要はないでしょう。
4-2 靴
靴に関しては男女共通で本革か、合皮の黒の靴を選ぶようにしてください。ヘビ革やワニ革、スエードなどはNGです。
女性の場合は黒の無地のパンプスで、プレーントゥ、スクエアトゥが望ましいです。ヒールが5cm以上あるものや、ストラップタイプのものは避けるようにしてください。ストッキングは黒で、ラメが入っていないものを履くのが一般的です。
男性の靴のデザインは、ストレートチップ、プレーントゥにしましょう。穴飾りが特徴のウィングチップは見た目が派手なため、葬式には不向きです。さらに靴の羽根には、内羽根式と外羽根式があります。最もフォーマルなのは内羽根式で、外羽根式はカジュアルな印象を与えます。
4-3 弔事と慶事の優先順位
弔事と慶事の予定が同日に重なってしまった場合、どちらを優先したら良いか、迷う方もいるかもしれません。故人との関係性にもよりますが、原則として、慶事よりも弔事を優先します。慶事は式典に参加できなくとも、今後も会ってお祝いを伝えることができますが、弔事は故人との1度きりのお別れの機会です。スケジュールを調整して両方参加できれば理想的ですが、難しい場合は弔事を優先しましょう。
5 弔事に参列できない場合はどうすれば良い?
ここでは、弔事に参列できない場合の対処法を紹介します。対処法としては、以下の3つです。
- ● 弔電を打つ
- ● 香典を渡す
- ● 供花・供物を贈る
5-1 弔電を打つ
弔電とは、死を悲しむ弔意を表す方法の一つで、お通夜や告別式に参列できないときに気持ちを伝える電報のことです。葬儀に参列できなくても、お悔やみの気持ちを言葉にして故人や遺族に伝えられます。
弔電は郵便局のレタックスや、インターネットなどで申し込めます。原則として、弔電はお通夜の前日までに届けるのがマナーです。どんなに遅くとも葬儀・告別式の開式の3時間前までには、葬儀斎場に届くように手配しましょう。
弔電の送り方やマナーについてはこちらの記事で解説しているため、ぜひ参考にしてください。
弔電の送り方 葬儀のお悔やみ電報の送り方とマナー | 株式会社くらしの友
5-2 香典を贈る
香典は通夜や葬儀に参列するときに持参するものですが、参列できない場合でも、香典を届けることができます。
方法としては、以下の3つが挙げられます。
- ● 葬儀に参列予定の家族や友人に託す
- ● 現金書留専用封筒で郵送する
- ● 代理人に参列してもらう
香典を他の参列者に託したり、代理を立てて参列してもらったりしても失礼にはあたらないので、弔意を伝える方法として検討してください。
5-3 供花・供物を贈る
弔電や香典以外にも、供花や供物を贈る方法があります。供花・供物は、葬儀の際に祭壇の周りに飾られます。
なお、葬儀斎場によっては飾る供花の種類が決まっていたり、遺族が供花や供物の受け取りを辞退していることもあります。事前に葬儀斎場に問い合わせて、供花・供物を送りたいことを伝え、送付場所や時間を確認してください。
供花・供物を贈るときのマナーについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
6 弔事は故人に言葉を掛けられる最後のチャンス
本記事では、弔事についてご紹介しました。弔事は年齢を重ねるごとに増えていくため、覚えておくことでスムーズな対応ができます。
弔辞のマナーやしきたりは、地域や間柄によって異なるため、心配な場合はは都度確認しましょう。故人との最後のお別れや供養の機会である弔事では、故人の家族や参列者に対して失礼のないよう心掛けましょう。
くらしの友では、葬儀に関するご相談を承っております。年中無休、24時間対応のフリーダイヤルをご用意しております。葬儀に関するご質問やご心配など、どうぞお気軽にお問い合わせください。