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葬儀に履く靴とは?選ぶポイントから性別年代別のマナーまで徹底解説
/(株)くらしの友 儀典本部
2004年くらしの友入社、厚⽣労働省認定の技能審査制度「葬祭ディレクター」1級取得。
故人様とご遺族に寄り添い、大規模な社葬から家族葬まで、これまで1,000件以上の葬儀に携わる。
葬式やお通夜、告別式といった葬儀に履く靴というと、黒色のシンプルな革靴を思い浮かべる方が多いかもしれません。実際、「葬儀では男女ともに黒色のシンプルな靴を履く」という認識が一般的なようです。ただし、黒色であっても素材によってはマナー違反になる可能性があるため、注意しましょう。
本記事では、葬儀に履く靴を選ぶポイントや、性別・年代別のマナーを徹底解説します。
この記事で分かること
- 葬儀では男女ともにシンプルな黒色の靴が基本
- カジュアルな素材の靴や、派手な靴は避ける
- 高齢者・妊婦は体調に合わせて靴を選ぶ
目次
1 葬儀に履く靴とは? 基本のポイントを5つ解説
葬儀に履く靴の選び方のポイントとしては、以下の5つが挙げられます。
- ● 色は男女ともに黒色
- ● シンプルさを重視する
- ● カジュアルな素材は避ける
- ● 中敷きは目立たないものを選ぶ
- ● 疲れにくい靴を選ぶ
以下で一つずつ解説します。
1-1 色は男女ともに黒色
前提として、葬儀で履く靴の色は男女ともに黒色が基本です。結婚式のような慶事(お祝いの場)では、白色や茶色の靴を履いても問題ありませんが、葬儀の場合は黒色の靴を履きます。
黒色には「喪に服す」という意味合いがあります。故人を偲ぶ気持ちを表すとともに、遺族の心情を気遣うためにも、喪服と合わせた黒色の靴を選ぶのが望ましいです。黒い靴であっても、スニーカーやサンダルといったカジュアルな靴は避けましょう。
1-2 シンプルさを重視する
次にシンプルさを重視しましょう。葬儀はおしゃれを楽しむ場所ではないため、シンプルな靴を選ぶのが基本です。派手な色の靴や装飾のある靴は、葬儀では避けましょう。
例えば男性の場合は、華やかなウィングチップは避けた方が良いとされます。女性の場合であればヒールの高すぎる靴、子どもはキャラクターなどの柄の入った靴は避けます。
1-3 カジュアルな素材は避ける
続いて、カジュアルな素材も避けるのが望ましいです。黒色の靴といっても、布やエナメル、本革など、さまざまな素材があります。葬儀の場で避けたいのは、エナメルのように光沢のある素材や、布のようにカジュアルな印象のある素材です。
反対に葬儀で問題のない素材は本革、合成皮革(合皮)の2つです。本革の靴はお手入れすれば長く履きつづけることができますが、合皮に比べて値段が高めに設定されています。また合皮は比較的お手頃価格で購入できますが、傷みやすく、本革のように長く履きつづけるのは難しいでしょう。
1-4 中敷きは目立たないものを選ぶ
葬儀中に靴を脱ぐ場面は少ないかもしれませんが、念のため派手な色の中敷きは避けた方が無難です。
場合によっては、控室で靴を脱ぐ可能性があるからです。
サイズ調整のために中敷きを使用する場合や、付属している中敷きの色が気になる場合は、別途黒や紺、ベージュの中敷きを購入すると良いでしょう。
1-5 疲れにくい靴を選ぶ
葬儀に履いて行く靴は、履きやすさも重視しましょう。葬儀の間は立っている時間も長く、靴擦れができることがあります。そのため葬儀に参加する際は、できるだけ履き慣れていて疲れにくい靴を選びましょう。
購入したての革靴は硬いので、履き慣らす時間がなければ、あらかじめかかとや小指に絆創膏を貼っておいたり、クッション性の高い中敷きを入れたりして、工夫しましょう。
2 【男性】葬儀に履く靴のマナー3つ
ここでは、男性が葬儀で履く靴のマナーを紹介します。具体的なマナーは、主に以下の3つです。
- ● デザイン
- ● 靴の羽根
- ● 靴下
それぞれのマナーを詳しく見ていきましょう。
2-1 デザイン
男性の葬儀の靴は、基本的には黒の革靴で紐があるものが適しています。紐のないローファーやスリッポン、モンクストラップシューズなどは、カジュアル・派手などの理由からマナー違反とされています。
例えばローファーは英語で怠け者(loafer)を意味し、革靴の中でもカジュアルな靴に位置づけられます。また、モンクストラップシューズは一見するとフォーマルですが、付いている金具の装飾がマナー違反と見なされるため、避けた方が無難です。
なお革靴にはストレートチップとプレーントゥ、ウィングチップの3つのデザインがあります。葬儀ではストレートチップ、プレーントゥを選びます。ウィングチップは見た目が派手な印象を与えるため避けましょう。
2-2 靴の羽根
革靴には靴紐を通す羽根と呼ばれる部分があります。葬儀で履く革靴は、内羽根式が一般的です。内羽根式とは、靴紐を通す羽根が足の甲の部分に入り込んでいて、紐を取っても羽根が全開しないタイプの革靴です。外羽根式は、羽根が足の甲に被さるようになっており、紐を取ると羽根が全開する作りになっています。
内羽根式の革靴は見た目がすっきりとしていて、品格が感じられます。一方の外羽根式は脱ぎ履きがしやすく、カジュアルな場面で使われてきました。従って、冠婚葬祭のようにフォーマルな場面で履く靴は、内羽根式の革靴が基本と考えると良いでしょう。
ただし、内羽根式は足の形によってはフィットせず、疲れやすかったりスマートに見えなかったりすることもあります。靴を購入する際は羽根の種類だけにとらわれず、自分の足の形を踏まえ、歩きやすさも考慮して選ぶことが大切です。
2-3 靴下
葬儀においてふさわしい靴下は、靴と同じように黒色です。装飾のない無地で黒色の靴下を選ぶようにしてください。
無地の黒い靴下を持っていない場合は、リブソックスやワンポイントの柄がある靴下でも代用可能ですが、カジュアルな印象になるためなるべく避けるのが無難です。
また、靴下の長さにも注意しましょう。肌が露出しないように長めの丈を選び、椅子に座っても足首が見えない長さのものを選んでください。ふくらはぎあたりまでのクルーソックスが理想ですが、なければハイソックスでも問題ありません。基本的には、ビジネスシーンで使われる靴下を選びましょう。シンプルな靴下は、洋服店以外でもコンビニや100円ショップなどでも購入できます。
3 【女性】葬儀に履く靴のマナー3つ
ここでは、女性が葬儀で履く靴のマナーを紹介します。具体的なマナーは、主に以下の3つです。
- ● デザイン
- ● ヒールの高さ
- ● 靴下
それぞれのマナーについて詳しく解説します。
3-1 デザイン
女性が葬儀に履いて行く靴は無地の黒色のパンプスが基本です。スニーカーやサンダル、ローファーはカジュアルとされるため、葬儀では避けた方が無難です。
なおパンプスには以下の4つのデザインがあります。
- ● プレーントゥ
- ● スクエアトゥ
- ● ポインテッドトゥ
- ● オープントゥ
葬儀に適したデザインは、つま先の丸いプレーントゥと、つま先が四角いスクエアトゥです。
つま先が三角に尖っているポインテッドトゥと、つま先のないオープントゥは葬儀ではふさわしくないとされています。他にもリボンなどの装飾が付いているファッション性の高い靴や、金属製の留め具がある靴、つま先やかかとが見える靴も避けましょう。
3-2 ヒールの高さ
パンプスのヒールの高さにも注意が必要です。床が大理石やフローリング仕様の場合、ヒールが高いと音が大きく響いてしまうことがあります。特にピンヒールは歩いた時に大きな音が出やすく、ファッション性も高いため、葬儀では避けた方が無難です。
また、足にフィットしないパンプスは、ヒールの音が大きくなる原因となります。反対に普段から履きつづけているヒールであっても、ゴムがすり減っていると音が大きくなる可能性があります。
従って、高さが3〜5センチの太めのヒールで、足にフィットした歩きやすいパンプスを選びましょう。所有している靴がゆるい場合は、インソールや中敷きでサイズ調整をしたり、ヒールプロテクターを使用したりして、大きな音が出ないよう工夫してください。
3-3 ストッキング
葬儀で履くストッキングは、パンプスの色と合わせて黒色にしましょう。靴下はマナー違反となるため避けてください。
ストッキングは、基本的に葬儀の場合、30デニール以下のストッキングを履くのがマナーです。デニールとは繊維の太さを表す単位で、数値が高くなればなるほど、ストッキングが厚くなります。葬儀においては、肌が少し透けるくらいの厚さを意識すると良いでしょう。
とはいえ、冬場や寒い地域の葬儀に参列するときは、30デニールよりも少し厚め(60デニール程度)のストッキングを履いても構いません。
いずれにしても、柄や光沢のあるストッキング、カジュアルな印象を与えるタイツなどは避けましょう。当日はストッキングが伝線したときに備えて、替えを持っていくと安心です。
4 【子ども】葬儀に履く靴のマナー
子どもが葬儀に履く靴は、スニーカーやローファーでも構いません。できれば黒色がよいですが、黒色の靴がなければ、紺や茶色などのダークカラーの靴であれば問題ないでしょう。サンダルやブーツ、キャラクターのイラストが入ったカジュアルな靴は、本人が気にいっているものであっても、葬儀では避けましょう。
また、靴下も黒色がベストですが、白や紺色といった控えめな色も子どもであれば構いません。長さはくるぶし丈やニーハイソックス、ルーズソックスは避けて、ふくらはぎの丈の靴下を選びましょう。
5 【お年寄り・妊婦】葬儀に履く靴のマナー
お年寄りや、妊婦の方は葬儀のマナーを厳守するよりも、体への負担が少ない靴を選ぶよう心掛けましょう。高齢で足に痛みのある方や、妊娠中で転倒するリスクを避けたい方は、脱着しやすい履き慣れた靴や、ヒールのないパンプスを選んでも問題ありません。
他にも、ストッキングは30デニール以下が無難とされていますが、体を冷やしたくない場合は厚めのストッキングでも問題ありません。体調に合わせて、葬儀に履く靴を選びましょう。
6 葬儀にふさわしくない靴は? 男女別に解説
葬儀ではシンプルな靴を選ぶことが基本ですが、その中でもNGとされる種類のものがあります。ここでは、男女別に葬儀で避けた方が良い靴を紹介します。
6-1 男性
男性は、以下に該当する靴は葬儀の場では避けましょう。
- ● ローファー
- ● スリッポン・モンクストラップ
- ● ショートブーツ
- ● スニーカー
- ● 黒以外の靴
たとえ黒色の靴であっても、上記のように葬儀の場ではふさわしくない種類の靴が多くあるので注意してください。またワニ革やヘビ革、スエードは殺生を連想させるので避けましょう。エナメル素材の靴も光沢があり派手な印象になるので、避けるのが無難です。
革靴はなるべく内羽根式を選んだ方が良いですが、足が痛くなる懸念がある場合は、外羽式でも構いません。
6-2 女性
女性が葬儀で避けた方が良いのは、以下の靴です。
- ● ポインテッドトゥ
- ● オープントゥ
- ● ローファー
- ● ストラップシューズ
- ● ミュール
- ● サンダル
- ● スニーカー
- ● 黒以外の靴
上記以外にも、ヒールが高すぎるものや装飾のあるパンプスは避けましょう。また靴の素材は男性と同じくワニ革やヘビ革、スエード、エナメルを避けてください。
歩きやすさを考慮したい場合は、派手な装飾がなければ、ヒールのないパンプスや、ストラップ付きのパンプスでも構いません。
7 葬儀用の靴を長持ちさせるには? 正しい管理方法3つ
ここでは、葬儀用の靴を長持ちさせるための正しい管理方法を解説します。正しい管理方法は、以下の3つです。
- ● 靴の手入れ後に防水スプレーをかける
- ● シューキーパーを使用して型崩れを防ぐ
- ● デリケートクリームを塗る
それぞれの管理方法を詳しく見ていきましょう。
7-1 靴の手入れ後に防水スプレーをかける
風通しの悪い場所に革靴を保管しておくと、カビが繁殖しやすくなります。そのため葬儀で靴を履いた後は、汚れを拭き取ってから防水スプレーをかけておきましょう。なお葬儀当日に雨の予報が出ている場合も、防水スプレーが役立ちます。前日にスプレーをかけて乾かしておけば、革靴が痛むのを防ぐことができます。
7-2 シューキーパーを使用して型崩れを防ぐ
革靴の型崩れを防ぐためには、シューキーパーの使用が欠かせません。シューキーパーは靴の販売店だけでなく、雑貨屋などでも購入できます。革靴のサイズに合ったシューキーパーを使い、型崩れを防止しましょう。
7-3 デリケートクリームを塗る
革靴は経年劣化によって乾燥し、少しずつ傷んできます。ひび割れを防止するためにも、革靴は定期的にデリケートクリームを塗ってお手入れをしましょう。お手入れの方法は、馬毛ブラシでほこりを落とし、豚毛ブラシでシューズクリームをなじませて、最後に靴磨き用グローブで乾拭きをすると長持ちします。
8 葬儀に参列するときは、シンプルな黒色の靴を選ぼう
本記事では、葬儀で履く靴のマナーについて解説しました。マナーは年代や性別によって異なりますが、基本的にはシンプルで黒色の靴を選びましょう。殺生をイメージさせるワニ革・ヘビ革・スエードの靴や、派手な印象を与えるエナメル素材の靴、金具が付いている靴は避けた方が無難です。
また、男性は座っても靴下が見えないよう、ふくらはぎまでの丈のものを履きましょう。女性は30デニール以下の黒のストッキングが適しています。
ただし、高齢の方や妊娠中の方は、体調を優先して歩きやすい靴を選びましょう。
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