- 葬儀
家族葬に呼ばない親戚がいる場合はどうしたらよい?対応法から注意点まで解説
/(株)くらしの友 儀典本部
2004年くらしの友入社、厚⽣労働省認定の技能審査制度「葬祭ディレクター」1級取得。
故人様とご遺族に寄り添い、大規模な社葬から家族葬まで、これまで1,000件以上の葬儀に携わる。
家族葬を執り行うときの悩みの一つが、あまり交流のない親戚を葬儀に呼ぶべきか、という問題です。家族葬に呼ぶ親戚の範囲には、明確な決まりがありません。そのため、交流の少ない親戚であれば、喪主の判断で家族葬に呼ばないという選択もできます。
しかし、家族葬に親戚を呼ばないと、相手方とのトラブルに発展する可能性があるのも事実です。また葬儀の参列者が減ることで、受け取る香典が少なくなり、喪主の経済的な負担が大きくなるというデメリットもあります。
本記事では、家族葬に親戚を呼ばないメリットや、親戚を呼びたくない場合の適切な対応方法、トラブルを防止するための注意点を解説します。
この記事で分かること
- 家族葬では、交流の少ない親戚を呼ばない選択をする人もいる
- 家族葬で親戚を呼ばないと、経済的な負担などのデメリットもある
- 家族葬で親戚を呼ばない場合は、相手方とのトラブルを避けるための注意が必要
目次
1 家族葬とは? 故人に近い関係者のみで行う小規模の葬儀
内閣府によると、家族葬とは、家族・親戚を中心とした葬儀と定義付けられています(※)。しかし、家族葬/一般葬(一般的な葬儀)の区別は慣習的なものであり、明確な定義はありません。
家族葬のその方のイメージによってさまざまですが、基本的には故人に近い関係者のみを呼ぶ、小規模な葬儀のことを指します。一般葬との違いは、葬儀に呼ぶ人の範囲だけで、葬儀の流れや手順などはほとんど変わりません。
1-1 家族葬に呼ぶ親戚の範囲
家族葬に参列する人は、親戚や近親者など、故人と生前深い関わりがあった人が中心です。家族葬に呼ぶ参列者は、ご家族(故人のご家族)のみ呼ぶか、あるいは親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の婚族)、友人も範囲に含めるケースが一般的です(※)。
しかし、こちらも家族葬の定義と同様に明確な決まりはありません。そのため、最終的には喪主の判断によって、家族葬に呼ぶ親戚・友人の範囲を決めることができます。
2 家族葬で親戚を呼ばない理由とは
家族葬をするとき、ほとんど交流のない親戚を呼ぶべきか迷う方もいるのではないでしょうか。実際に家族葬では、交流のない親戚はあえて呼ばないという選択をする喪主の方もいます。
親戚を呼ばないという選択をした方の決め手となったのは、主に以下の2つの理由です。
- ● 親戚への接待の対応が減るから
- ● 家族だけで静かに見送りたいから
2-1 親戚への接待の対応が減るから
家族葬で親戚を呼ばない1つ目の理由は、親戚への接待の対応が減るからです。
家族葬に限らず、葬儀は参列者が増えるほど対応に時間がかかります。特に喪主の方は、葬儀の進行だけでなく、参列した親戚への気配りも必要です。
例えば、葬儀当日は以下のような対応が求められます。
- ● 参列に対してのお礼のあいさつ
- ● 受け取った香典への対応(香典返し)
- ● 葬儀の会食(精進落とし)の手配
家族葬に呼ぶ人数を制限すれば、こうした接待にかかる手間を減らせます。葬儀の肉体的・精神的な負担をなるべく減らしたいと考えている人は、交流のない親戚は呼ばないという選択肢もあります。
2-2 家族だけで静かに見送りたいから
2つ目は、家族だけで静かに故人を見送りたいからという理由です。家族葬の特徴は、故人と近しい方だけで集まって、故人の思い出を偲ぶことにあります。生前に故人との関わりが薄かった人や、交流がほとんどなかった人には、葬儀への参列も遠慮してほしいと考える人もいるでしょう。
家族葬に交流のない親戚を呼ばず、近親者のみで集まることで、静かに故人を見送ることができます。人数も少なくなれば、小さな葬儀式場を貸し切り、アットホームな雰囲気で葬儀を執り行うことも可能です。
家族葬に親戚を呼ぶかどうか迷っている方は、これら2点を参考にしてください。
3 家族葬で親戚を呼ばないことのデメリット
家族葬で親戚を呼ばない場合、デメリットも3つあります。
- ● 葬儀前後の準備や連絡作業が多くなる
- ● 経済的な負担が増加する可能性も
- ● 葬儀後に自宅への弔問客が増える可能性
3-1 葬儀前後の準備や連絡作業が多くなる
家族葬で親戚を呼ばないことによる1つ目のデメリットは、葬儀前後の準備や連絡作業が多くなることです。先ほどは、家族葬に呼ぶ人を制限することで、葬儀当日の肉体的・精神的な負担が少なくなると述べました。しかし、家族葬に親戚を呼ばないと、葬儀の準備や連絡作業にかかる手間が増えてしまうかもしれません。
通常、故人の近親者に対しては、葬儀に際して訃報の連絡をします。家族葬に呼ばない場合は、その理由も含めて参列をお断りする旨を説明しなければならないため、やりとりにかかる労力が増える可能性があります。
3-2 経済的な負担が増加する可能性も
2つ目のデメリットは、経済的な負担が増加する可能性があることです。家族葬に親戚を呼ばないと、その分香典が少なくなるため、葬儀費用の自己負担額が増加します。香典を一切受け取らない場合は、全ての葬儀費用を喪主が負担しなければなりません。
また人数が少ないからといって、さまざまなオプションを追加すると、内容によっては費用負担が増加する可能性があります。家族葬は一般葬より葬儀費用が抑えられる傾向にあるとはいえ、予算に合った葬儀プランを選ぶことが大切です。
3-3 葬儀後に自宅への弔問客が増える可能性
3つ目のデメリットは、葬儀後に自宅への弔問客が増える可能性があることです。葬儀に参列できなかった場合、後で弔問を希望する方もいます。
自宅へ弔問客が訪れる期間の目安は、葬儀後1~2週間程度です。葬儀が終わった後、数週間は弔問客への対応が増える可能性があります。
4 家族葬に親族を呼ばない場合の対応方法を解説
家族葬に親戚を呼ばない場合、その旨を事前に連絡すべきか迷う人もいるでしょう。ここでは、適切な対応方法を2つ紹介します。
4-1 訃報を連絡するときに、参列を断る連絡を入れる
1つ目の対応方法は、訃報の連絡をするときに参列をお断りする方法です。訃報の連絡のみでは「連絡をもらったのだから参列した方がよいのでは」と迷う人もいます。はっきりと「少数の近親者のみで葬儀を執り行いたい」という意向を伝えるようにしましょう。
またできるだけ角が立たないような言い回しを考えることも大切です。例えば、参列の範囲を明確にし、斎場の広さなどを理由にします。
「最後のお別れは家族のみでしてほしいという故人の希望がありましたので、参列は子供・孫までにしようと思っています。斎場も狭く人数制限も生じてしまうため、ご参列は辞退をいたします。ご容赦いただければと思います。」また参列をお断りする方がご高齢の場合相手の体調や参列いただくことの負担を思いやるようなニュアンスを加えましょう。
もう一点注意したいのが、参列をお断りする連絡を入れるときに、葬儀についての情報を広めないようお願いすることです。訃報が広がると、対応の手間が増える可能性があります。
4-2 葬儀を終えた後に連絡する
別の対応方法として、葬儀を執り行った後で、相手方に事後報告をする方法もあります。相手には故人が亡くなったことを伝えていないため、別の方から訃報について知らされない限り、葬儀に参列することはありません。礼を欠くことになるため、できるだけ避けたい方法です。
どうしてもやむを得ない事情があり事後報告と事後報告とする場合のタイミングの目安は、家族葬が終わってから1~2週間後です。中には事後報告に不快感を覚える方もいるため、「先日、近親者のみで家族葬を済ませました。生前は(故人)が大変お世話になったにも関わらず、このような形でのご連絡となり、申し訳ございません」など、おわびのニュアンスを加えて連絡することをおすすめします。
4-3 葬儀会社に相談する
家族葬に呼ばない親族への対応方法に迷ったら、葬儀会社に相談するのも一つの方法です。葬儀会社には、葬儀に関するさまざまな悩みや課題に対応してきたノウハウがあります。葬儀会社の担当者に相談すれば、喪主・親戚の双方にとって角が立たない対応方法をもらえることがあるかもしれません。
また親戚に対し、葬儀への参列をお断りする旨を伝えた場合、相手方から葬儀会社に対して問い合わせがあるかもしれません。その際に事情を話しておくと、担当者がスムーズに対応できます。葬儀に関する困りごとは自分で悩まず、葬儀会社と協力して解決していくのがおすすめです。
5 家族葬に呼ばない親戚への対応で避けたいこと
家族葬に呼ばない親戚への対応で避けたいのが、訃報を一切伝えないことです。家族葬では、参列して欲しい人のみに訃報を伝え、それ以外の人には訃報を伝えないというやり方もあります。
ただし、遅かれ早かれ訃報を伝えないと、相手の方は故人が亡くなった事実を他人から知らされることになるかもしれません。その結果、相手方を混乱させてしまったり、不満を感じさせたりと、思わぬトラブルにつながるかもしれません。
親戚とのトラブルを避けるためには、事前に訃報の連絡をした上で、参列をお断りする旨を丁寧に申し入れるか、葬儀後すぐに事後報告することをおすすめします。
6 家族葬に親戚を呼ぶか呼ばないか迷ったら? 決め方を解説
家族葬に親戚を呼ぶか呼ばないか迷ったときの判断基準は以下の2つです。
- ● 故人の遺志を尊重する
- ● 葬儀の規模(人数)で決める
それぞれの判断基準について説明するので、悩んだ際は参考にしてみてください。
6-1 故人の遺志を尊重する
1つ目は、故人の遺志に基づいて判断する方法です。故人が遺言など、何らかの方法で葬儀に関する希望を残していた場合は、故人の遺志に基づいて参列者を決めましょう。近年は人生の終わりに備えて、エンディングノート(終活ノート)をつける人も増えてきました。エンディングノートの種類によっては、葬儀の参列者リストを作成するページがあるものもあります。
親戚を呼ぶか呼ばないか迷ったら、まず故人の遺志を尊重し、葬儀に関する指示がどこかに書き残されていないか確認してください。
6-2 葬儀の規模(人数)で決める
2つ目は、葬儀の規模(人数)を判断基準にする方法です。家族葬の参列者は、一部の例外を除けば10~30名程度と小規模なケースがほとんどです。先に葬儀の規模を決めてから、参列者のリストを作成していくと、葬儀に呼ぶ親戚、呼ばない親戚の優先順位付けがしやすくなります。また家族葬の規模を理由として、参列をお断りする旨の連絡がしやすくなるのもメリットです。
以下は葬儀の規模に基づいた、家族葬に呼ぶ人の範囲の目安をまとめた表です。
家族葬に呼ぶ人の選択に迷った場合は参考にしてください。
7 家族葬に呼ばない親戚がいる場合は注意が必要 対応に迷ったら葬儀社に相談を
家族葬に呼ぶ親戚の範囲は、法律などで決められているわけではありません。故人のご家族以外に、近しい親族、友人を呼ぶことが一般的ですが、故人と生前のお付き合いを基準に、喪主の判断で決めます。親戚を呼ぶか呼ばないか迷ったら、葬儀の規模(人数)を先に決め、近しい関係者から順番に呼びましょう。また故人が遺言などを残している場合は、故人の遺志に基づいて参列者を決めてください。
親戚を呼ばない家族葬の場合、受け取る香典が減って経済的な負担が大きくなったり、相手方とのトラブルに発展したりする可能性もあります。困った場合は利用する葬儀会社に相談し、対応方法を話し合うことが大切です。
くらしの友では、家族葬に関するご相談を承っております。疑問点やご不安な点がある方は、お気軽にご相談ください。