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家族葬を読経なし・戒名なしでも行える? メリットや注意点を解説
/(株)くらしの友 儀典本部
2004年くらしの友入社、厚⽣労働省認定の技能審査制度「葬祭ディレクター」1級取得。
故人様とご遺族に寄り添い、大規模な社葬から家族葬まで、これまで1,000件以上の葬儀に携わる。
日本の葬儀の大半は仏式です。仏式の葬儀には読経と戒名がつきものです。僧侶より戒名を授かり、通夜・葬儀で読経をしていただくのが一般的な流れです。一般的に、菩提寺がある場合は、葬儀の際は必ず菩提寺へ連絡します。葬儀後、菩提寺の管理している墓地に納骨をする場合、連絡をせずに葬儀を行ってしまったり、直葬を行ってしまったりすれば菩提寺とのトラブルにつながるため注意が必要です。
一方で菩提寺を持たない方は、どのように葬儀を行うか迷う人もいるかもしれません。この記事では読経なし・戒名なしで家族葬を行う際、持っておきたい知識やメリット、注意すべき点について解説します。
この記事で分かること
- 読経・戒名なしの家族葬は、葬儀費用のうち「寺院への支払い」を抑えられる
- 菩提寺があり、その菩提寺へ納骨を希望する場合は原則として戒名が必要
- 戒名なし(俗名)で読経をしてもらうケースもある
- 家族葬に読経を希望しない場合は、無宗教葬儀となる
目次
1 家族葬と読経・戒名の基礎知識
まずは家族葬と読経、戒名、それぞれの基礎知識を把握しておきましょう。
1-1 家族葬とは
家族葬とは故人の家族や親族など、限られた人数の参列者で執り行われる葬儀です。しかし家族葬に関して明確な定義はなく、家族葬だからといって家族や親族しか参列できないというわけではありません。故人と生前親しかった友人が参列することもあり、あくまでも参列者の候補は喪主の采配によって決定されます。
家族葬については下記でも詳しく解説しています。
1-2 読経とは
一般的に読経とは、仏教徒が般若心経や阿弥陀経といった経典を、声に出して読み上げることです。また葬儀における読経とは、お通夜や葬儀の場で僧侶がお経を読むことを意味します。
キリスト教式、神式で執り行われる葬儀では、読経はありません。
僧侶に読経をあげていただく場合は、そのお礼としてお布施をお渡しする必要があります。
1-3 戒名とは
戒名とは仏の世界における故人の名前です。仏教が生まれたインドには、戒名を授ける慣習はありません。戒名は、仏教が中国に伝わってから始まった儀式とされています。現代の日本における戒名は、江戸時代になってから広まったと考えられています。
戒名は日本の葬儀において、重要な役割があります。
仏式の葬儀では寺院から戒名を授かるのが一般的です。その後、寺院から授かった戒名は位牌や墓石に刻まれます。
戒名は故人に対して授けるものだと思っている人も多いですが、本来は生前に与えられるものです。在家の人が出家をして仏弟子に入った際に与えられる名前が、本来の戒名です。しかし出家をしていない人でも、亡くなると戒名を授けてもらうことができます。
そして戒名があることで、故人が極楽浄土へ導かれると考えられてきました。
そのため仏教においては、死後に戒名を授けてもらうことで、出家していない人でも迷うことなく極楽浄土へ行くことができるために非常に大切にされている儀式です。
戒名は葬儀の際に授かって終わりというわけではありません。
戒名は葬儀後の年忌法要など、故人に対する供養のために末長く使われていく名前です。また、遺族にとっては、戒名を授かることで、故人が安らかに眠ることができるだろうという安心感を得ることができます。
2 読経や戒名が必要な理由
読経で読み上げられる経典には、お釈迦様による、生きている人を幸せに導くための教えが記されています。そのため、葬儀における僧侶の読経は、家族や親族といった参列者の悲しみを癒す役割を担っています。
僧侶や遺族が葬儀や法要でお経を唱えることは、間接的に故人の徳を積むことに繋がり、故人を極楽浄土へ導く手助けとなります。お経を唱えるだけでお釈迦様の救済を得られて、極楽浄土に行けると考えられている宗派もあります。
先述した通り戒名を付ける目的は、故人が極楽浄土まで迷わずにいけるようにするためです。亡くなった後でも戒名を授かることで、故人が仏の弟子となったことの証明になり、極楽浄土へ導かれると考えられています。
なお、浄土真宗で授けられるのは戒名ではなく、法名です。また、日蓮宗では法号が授けられることで、故人が極楽浄土に向かえると考えられています。
菩提寺がある場合、戒名は菩提寺の住職が故人の生前の様子を考慮して決めます。戒名のうちの一文字は現世での名前から、もう一文字は仏様のお名前や経典から取ることが多い傾向にあります。そしてそのあとに続く「居士」や「大姉」といった「位号」を含めて戒名とすることが一般的です。
この「位号」は、成人かそうでないかによってつけ方が異なり、成人していても性別、年齢、社会貢献度、信仰心によってその位が異なります。
3 家族葬を読経なし・戒名なしで行うメリット
読経なし・戒名なしの家族葬におけるメリットは、出費の抑制と自由な葬儀スタイルです。それぞれについて解説します。
3-1 戒名なし(俗名)で 家族葬を行うメリット
菩提寺との関係があり、その菩提寺へ納骨を希望する場合は、原則として戒名が必要です。不幸があったらすぐ菩提寺に連絡し、葬儀の相談をします。菩提寺が遠くても、近くの同じ宗派のお寺を紹介してくれることもあるので、必ず連絡をしましょう。
菩提寺がない場合には、自身で近隣の寺院を探すか、希望する宗派の寺院を紹介してくれる葬儀社もあります。葬儀に支払うお布施は、読経や戒名への対価として支払うのではなく、あくまで「財施(ざいせ)」としての行いだというのが本来の考え方です。とはいえ、葬儀社から紹介された寺院へ支払うお布施代は、戒名の位に応じて金額を指定されることが一般的です。金銭的な事情などで戒名をつけていただくのが難しい場合には、戒名なし(俗名)で仏式の家族葬を執り行うことも可能です。
お布施の相場やマナーについては下記で詳しく解説しています。
3-2 読経なしで家族葬を行うメリット
僧侶を呼ばない(読経なし)で家族葬を行うメリットの一つめに、お布施代がかからないことがあげられます。僧侶に読経をお願いして仏式で家族葬を執り行う場合、お布施を渡すのが一般的です。お布施とあわせて、交通費として御車代や御膳料を渡すこともあります。
また、毎年お盆の棚経(たなぎょう)や年忌法要ごとに読経や塔婆の作成の依頼が必要なため、その際のお布施代がかかります。
このようなお布施代がかからなくなるため、経済的な負担の軽減につなげられます。
二つ目のメリットとしては、仏式以外の自由なスタイルで家族葬を行うことができるる点があげられます。
僧侶に読経を依頼するのは、仏式の葬儀ならではの形式です。
特定の宗教宗派によらない無宗教葬儀であれば、形式にとらわれずに自由なスタイルで家族葬を執り行えます。近しい人が中心となって行う家族葬であれば、故人の遺志や家族の考えを葬儀に反映しやすいでしょう。例えば、音楽を演奏したい、合唱がしたい、映画を流したいといった希望が叶えられます。
4 家族葬を読経なし・戒名なしで行う際の注意点
読経と戒名を希望しないのであれば、菩提寺や親族への相談が欠かせません。相談がないまま進めてしまうと、トラブルにつながりかねません。
4-1 菩提寺がある場合は不義理に当たる
菩提寺があるにもかかわらず、仏教の教えに沿わずに葬儀をしてしまうのは、寺院に対する不義理に当たりかねません。菩提寺があって、それでも読経と戒名を望まない場合は、その旨を事前に伝えておきましょう。何も伝えずに葬儀をしてしまうと、菩提寺への納骨を断られてしまう可能性があります。
また、何も告げずに葬儀を執り行ってしまうことで、菩提寺との関係が悪化しかねません。トラブルを防ぐためにも、事前に菩提寺に相談して了承を得ておきましょう。
4-2 親戚への説明・了承が必要
親戚への説明と了承も必要です。中には読経や戒名がないことに対して理解を示してくれない親族もいるかもしれません。そのため、なぜ読経なし・戒名なしで家族葬を執り行うのかという理由を説明して、了承を得ておきましょう。
4-3 後悔しないために理由を明確にする
また本当に読経と戒名はいらないのか、家族で話し合うことも大切です。葬儀は故人にとって最後の儀式です。さらに、故人の家族にとっても故人と過ごせるかけがえのない最後の時間です。読経をあげない、あるいは戒名を授けない葬儀にしたことで後々後悔しないように、なぜ読経なし・戒名なしで家族葬を執り行うのか理由を明確にしておきましょう。
5 読経なし・戒名なしで行える家族葬の種類
読経なし・戒名なしの家族葬の種類として次の2つが挙げられます。
- ● 無宗教葬
- ● 直葬(火葬式)
それぞれの種類について解説します。
5-1 無宗教葬
無宗教葬とは特定の宗教の教えや考えが反映されない葬儀です。無宗教葬であれば、故人や家族の意見を自由に反映できます。例えば、参列者で合唱する、演奏するといった意見を反映できるでしょう。
無宗教葬については下記で詳しく解説しています。
5-2 直葬(火葬式)
直葬(火葬式)とはお通夜や告別式などを省略して、親しい人だけで火葬のみを執り行う葬儀です。お通夜や告別式がないため、一般的な葬儀よりも費用を大きく抑えられます。しかし、親族からの反対や参列希望者からの不満の声が上がるといったトラブルも考えられるでしょう。
直葬については下記で詳しく解説しています。
6 読経・戒名がない家族葬にはメリットだけでなく注意点も沢山あります。
読経や戒名は仏式の葬儀では欠かせません。しかし、無宗教葬や直葬といった葬儀の形であれば読経や戒名がなくても葬儀を執り行えます。また読経なし・戒名なしの場合、葬儀でかかる費用を抑えられる上に、自由な葬儀を実現することが可能です。
一方、自由であるということは、供養の仕方についての拠り所が無いということでもあります。仏式の葬儀では、一連の葬送儀礼を通して、段階を踏んで故人を供養します。すべての儀式には意味があり、それを行うことによって故人が安らかになれると信じることが、遺族にとっての安心にもなります。そして、その後の法要などを通して、段階を踏んで心の整理をしたり、故人を偲ぶ機会を得ることができます。
大切な人とのお別れに際して、どんな送り方を選ぶのかは、家族でよく相談をしてください。
また、菩提寺があるにもかかわらず読経や戒名が不要と一方的に判断してしまうと、納骨を断られたり、その後菩提寺との関係が悪化する可能性があります。読経や戒名を望まない場合はメリットだけでなく注意点も把握しておきましょう。
くらしの友では、家族葬についての疑問にお答えしています。家族葬で不安なこと・分からないことがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。